有線放送大手、USENによるライブドア(LD)の経営統合計画に暗雲が垂れ込めている。私財95億円を投じて個人としてLDの大株主となった宇野康秀USEN社長がLDの社外取締役に就任したものの、LDの発行済み株式の過半を握る外資系ファンドがUSENのLD子会社化に反対する姿勢を強めているからだ。
USENにとって痛いのは、IT(情報通信)ベンチャー株市場の全体的な相場下落に自社の業績低迷が重なり、株価が急落していること。子会社の映画制作・配給大手、ギャガ・コミュニケーションズの決算修正に対する投資家の不信もあって、06年初には3,500円台だったUSENの株価(大証ヘラクレス上場)は7月21日には1,138円と約3分の1の水準まで暴落している。
USEN自身が敵対的買収にさらされる危険
ライブドアとの経営統合は実現できるのか
宇野社長はLDとの経営統合構想に関して「両社のシナジー(相乗効果)を最大限に引き出し、年間売上高5,000億~6,000億円規模のIT企業連合を目指す」とぶち上げた。しかし、LD関係者はJ-CASTニュースに対して、「USENがこの株価では、外資系ファンドだけでなく、LDの個人株主にも、USENとの株式交換による経営統合の同意を取り付けるのは難しい」と明かす。
宇野社長はUSENが注力するインターネットの無料動画配信サービス「Gyao」の視聴登録者が1,000万人を突破していることを前面に押し立て、閲覧者の属性や好みなどに応じた「セグメント広告」の本格的な展開による将来的な成長力を必死にアピールしている。
だが、目先の利益に目ざといLDの大株主の外資系ファンドマネージャーを説得するには力不足。株価下落でUSENの時価総額は900億円を割る水準まで下がっており、IT業界では「LDの統合どころか、USEN自身が敵対的買収にさらされるリスクも高まっている」(大手ポータル幹部)との厳しい見方さえ出ている。
ライブドア内部には、独立を模索する動きも出始めた
そんな中、LD内では「USENとの統合は遠のいた」(幹部)との雰囲気が広まり、金融事業やネットショッピング事業の幹部の間ではUSENや外資への身売りを拒否して、MBO(マネジメント・バイ・アウト=経営者による事業買収)による独立を模索する動きも出始めている。
宇野社長は、06年12月のUSENとLDの株主総会で株式交換による経営統合への株主の同意を得て、07年には一気に飛躍を図る青写真を描いているとされるが、あと4カ月余りの短い時間で自社の株価を回復させ、外資ファンドも含めた株主を説得できる成長シナリオを本当に打ち出せるのか。証券取引法違反事件で信用が失墜したとは言え、1,000億円近い金融資産を持つLDに対しては、大株主の外資系ファンドが自ら買収に乗り出す可能性も囁かれており、宇野USENのLD統合実現への道のりは険しさを増している。