日本テレビの共同通信のニュース配信からの脱退がマスコミ業界に波紋を投げかけている。日テレに続いて読売新聞や日テレ傘下の地方局も追随、他の新聞やテレビ局にも波及するとの観測も出た。そうなったら共同通信は存亡の危機。またぞろ、時事通信との合併説が取り沙汰されている。
日本テレビが共同通信から脱退したのは2006年3月末。日テレが共同に支払う年間契約額(1億円から2億円といわれている)をめぐって、共同が契約料引き上げを通告、この交渉が決裂したとみられている。脱退した日テレは親会社の読売新聞からのニュース提供を強化していく。
読売や日テレ系列局が一斉に脱退すれば大打撃
共同通信が入居する汐留メディアタワー。通信社の未来はどうなるのか
日テレの脱退には読売新聞が関与しているとの見方もある。読売は98年にも外信記事に限って共同から配信を受けている朝日、毎日新聞とともに契約料の値下げを要求。共同がこれを拒否すると、読売の渡辺恒雄社長(当時)が契約解消や脱退をちらつかせる騒ぎとなった。
当時、読売は全国の地方紙の切り崩しを行っていた。それには地方紙にニュースを配信する共同の財政基盤の弱体化が早道と考えたようだ。今回の日テレの脱退も同じ狙いがあるというわけだ。もっとも、これには「日テレの契約金が共同の予算に占める割合はたいしたことはない。うがった見方である」(共同通信幹部)と否定的だ。
しかし、日テレだけでなく読売や日テレ系列の地方局が一斉に脱退すれば共同には大きな打撃となる。共同は日テレの復帰を睨んで国内外のニュース報道の強化を掲げる一方、日テレが共同の記事を不正使用していないかどうかの監視を強めているという。
共同の契約料金をめぐっては数年前、産経新聞が脱退を突き付けた。産経は共同にとって大口の加盟社とあって共同も対応に苦慮。結局、産経は契約金の大幅な値下げを獲得して決着した。日テレも“産経方式”を狙ったが、共同は他のメディアへの波及を危惧して日テレの要求を蹴ったともいわれる。
2年前にも合併説がマスコミを賑わせた
こうした共同通信の危機がいわれると必ず出てくるのが時事通信との合併説。両社は45年、国策通信会社だった同盟通信から分かれた。2年前、元時事通信社長が「世界に通用する通信社をつくるのが国益にかなう」と社内報に書き、合併説がマスコミを賑わせた。
両社は電通の大株主として電通の株式公開を機に持ち株を放出、新社屋を建てたばかり。共同の社員数は1,900人、時事は1,400人で合併となれば1,000人近いリストラが必要で現実的ではない。ただ、日テレの脱退が両社に激震を与えたのは確かで、合併話が再燃しないという保証はない。