日銀の福井俊彦総裁が「村上ファンド」に1,000万円を出資していたことについて、総裁の「脇の甘さ」に各界から批判が噴出している。「ネット社会」でも「レッドカード」を出すブロガーが多い。
ブロガーからも福井氏に「レッドカード」
IT関係のニュースを紹介しているブログ「ニュースIT羅針盤--ネットビジネスの覇者を追え」は、
「だいぶ古い話になる。首相候補ともいわれた北欧の女性大臣が、子供のための買い物でたまたま持ち合わせがなく、役所のクレジットカードで決済してしまった。後日、個人で支払ったか支払うつもりだったが、この問題を指摘され、即座に辞表を出した。公職にあるものはそれだけ厳しく身を律さなければならないと思う。それができないなら公職にはつくべきではない。日銀総裁に就任する前の、富士通総研時代の話だから責任はないというが、これだけの事件に発展した村上ファンドとのかかわりを考えるとき、日銀総裁という重要なポストにいる人になにも責任がないと考える方がおかしい」
と、公職の責任の重さについてふれている。
村上氏の言動を見ていたら、気付くべきだ
市況を解説しているブログ「黒田半兵衛の推奨株」は、総裁就任時に身辺をきれいにすべきだったとした上で、
「少なくとも、その後の村上氏の言動を見ていたら、気付くべきであった。私のような一投資家でも、このブログに書いたように、『ホリエモンよりよほど悪質である。塀の上を走っているがいつ塀の中に落ちるか』『ホリエモンは強要や恐喝をしないが、この方は昔の総会屋以上である』とまで書いているのだから」
と、「見通しの甘さ」を指摘している。
その次に多いのが「インサイダー説」。日銀総裁という立場を利用して、村上ファンド解約のタイミングを決めたのではないか、という推測だ。「村上逮捕」や「量的緩和解除」など、複数のインサイダー疑惑がささやかれている。
一投資ファンドのアドバイザーを務めることが問題だ
政治・経済の話題を扱っている「Baatarismの溜息通信」は、6月6日の記事でJINビジネスニュースの記事「村上一転「降伏」 守った人の名前」を読んだ感想として
「この記事の中では、村上氏が福井総裁などの関係者を守るためにインサイダー取引容疑を認めたと書かれていますが、例え村上氏の罪がどうであれ、福井総裁が一投資ファンドのアドバイザーを務めること自体が、日銀総裁としてふさわしくない行動だと思います」
と書いている。
一方で、時事問題の論評が掲載されている「ジジィ放談」は、
「数ヶ月前に解約を申し入れた?それは、総裁という立場でいずれかから『近いうちに捜査が行われるかもしれない』という情報を得たからじゃないの?そうだとすればその情報ってインサイダー情報でしょうが」
と、日銀総裁という立場を利用して捜査情報をあらかじめ入手していたのではないか、という見方だ。
小泉首相に対しても怒りをぶつける
また、一部では、福井氏発言で株式市場が暴落した事への怒りの声も見られる。自分の日々の投資をつづるブログ「それなり」は、
「小泉総理は、自分の意見に合わない人には、蛇のように噛み付くが、世間でニュースになったり、疑問視される事には、法律に触れてなければ問題ないという姿勢だ。もしかしたら、福井総裁は自分のお気に入りナのかも知れない。株価には一喜一憂しないと以前言っていたが、ここまで下げた事は、市場が福井総裁を拒否した証拠です。外人投資家は、日本株を売る十分な材料になるのでしょう」
と、福井氏を擁護した小泉首相に対しても怒りをぶつけている。
そうは言っても、福井氏を擁護する発言も、少ないながらも見られる。自分の投資状況を紹介する「株と為替と起業日記」は、
「じゃ、ある証券会社の社員がすすめる投資信託を買って、その証券会社の社員がインサイダー取引で逮捕されたら、投資信託を買った人も罪になるっていうのと今回の騒動は同じ意味ですからね」
と、「出資しただけで罪に問われるのはおかしい」と主張する。
村上氏の動向を伝える「村上ファンド(M&Aコンサルティング)/村上世彰氏情報」は、少し違った角度からの擁護論を唱える。共産党の志位和夫委員長が「村上ファンドのインサイダー取引に日銀総裁がかかわっていたことで、道義的責任が出てくる」と話したことに対して、
「実際は、『福井俊彦氏が(日銀総裁になる前に、個人的に)出資したファンドが、今になって、インサイダー取引の疑惑をかけられている』です。間の流れを全部取っ払って、直接『福井俊彦総裁がインサイダーに関わった』というような言い方は明らかに個人の名誉を傷つけていると思いました」
と、志位氏の論理飛躍を批判している。
永田町では6月14日午前、野党3党が福井氏の道義的責任を追及することで一致した。