日銀の福井俊彦総裁は、村上ファンドに運用委託していた1,000万円を数カ月前に解約を申しこんでいた。オリックスが村上ファンドから出資金と役員を引き揚げると発表したのが2006年5月12日。いずれも村上氏の逮捕のかなり前だ。福井氏とオリックスの宮内義彦会長の逃げ足の速さは、なぜなのか。
福井日銀総裁が06年6月13日の参院財政金融委員会で、富士通総研在職中の99年秋に、村上ファンドに1,000万円を拠出していたことを明らかにした。村上氏が旧通産省を退職した時で、資金集めに苦労していた村上氏に、富士通総研の有志数人が1人1,000万円を拠出したという。福井日銀総裁は、「利益はあまりたいした金額ではない」「現金化していない」「アドバイザー契約は存在しない」と答弁した。民主党はさっそく責任追及に乗り出す構えだ。
オリックスもタイミングよく提携を解消
村上氏逮捕の情報は漏れていたのか
この答弁について、明治大政経学部の高木勝教授のように、
「日銀のトップが、民間時代のこととはいえインサイダーを犯した会社に拠出していたのは、まったくもって不用意です。結果的に犯罪に加担したとも疑われ、道義的な責任は問われると思います」
という批判が出るのは当然だ。
そこで思い出されるのがオリックス。村上氏の逮捕前に、オリックスは資金と役員を引き上げ、実にタイミングよく村上ファンドとの提携を解消している。オリックスはMACアセットマネジメントに資本金の45%に当たる約4,000万円を出資し非常勤役員二人も派遣していた。宮内会長と村上氏は、村上氏が通産官僚だったころからの知人。村上ファンドも宮内氏の後押しがなければ存在は難しかったとされている。
だからこそ、この両氏の資金引き上げのタイミングに、“疑惑”が生じるのだ。
JINビジネスニュースは、「ゴーン革命と日産社員 日本人はダメだったのか?」などの著書がある経済ジャーナリストの前屋毅氏にインタビューした。
以前、前屋氏が村上氏に取材した際、村上氏は「宮内氏らにきちんと教えをこうている」などと話し、バックには有力者が付いていることを強調していたという。