トヨタ自動車は2006年5月10日、06年3月期決算を発表した。売り上げ利益共に過去最高を記録した絶好調トヨタに対し、大手全国紙各紙は11日付けの紙面で、一斉にトヨタの今後の経営に警鐘を鳴らす記事を掲載した。
(1)リコールの増加で “トヨタ神話”の崩壊(2)事業の急拡大による人材不足(3)アメリカでの元社長のセクハラ訴訟(4)巨額設備投資による高コスト経営―――などだ。
最大の財産とする品質管理に“異変”
各紙がそろって取り上げたのが、リコール問題によるトヨタブランドの信頼喪失。05年10月に、ライトスイッチの不具合で過去最大規模の128万台のリコールが発生。高品質が売り物の「レクサス」でも、シートベルトの製造不良で1万1千台のリコールを招いた。
読売新聞は、「トヨタが最大の財産とする品質管理に“異変”を感じさせる」と書いた。「背景には、生産・販売の急拡大による人材育成が追い付かないことや、部品メーカーを含めた製造現場の疲弊もあるようだ」とした。
産経新聞もトヨタの品質管理について、増産に現場が追い付いていないことを指摘し、「海外拠点を作ることで人員を裂かれ、国内でも限られた人員で、なんとかしのいでいる状態」という生産現場幹部の声を紹介している。毎日新聞は、コスト削減が逆に仇となったとし「部品の共通化とリコールが増えた時期は一致する。一つの部品に不具合が出ると影響が多くの車種に広がる」との見方を示した。
日本経済新聞も「(品質管理を)新年第一のテーマとして取り組む」という渡辺捷昭社長のコメントを紹介した。
さらに、北米トヨタ元社長のセクハラ疑惑は、最大の収益源である北米市場のイメージダウンにつながる。産経新聞は「危機管理が緩んだとしかいいようがない」とのトヨタOBのコメントを載せた。毎日新聞は、90年代に三菱自動車米国子会社が起こした同様の問題が、人権団体の抗議から発展し不買運動に至った例を挙げ「対応を誤れば、信頼失墜にとどまらず、かつての日本車バッシングの引き金にもなりかねない」と、トヨタが危機感を持っていると報じた。日本経済新聞は「業績への影響はない」との渡辺捷昭社長のコメントを載せた。