Google日本のホームページの中に、報道関係者向けの「プレスセンター」がある。グーグルの企業広報コーナーなのだが、1年以上前の2005年4月20日で更新が止まっていた。「センター」には報道関係者問い合わせ先の電話番号も記されている。
グーグルに寄せられる関心は非常に高い。今後、どのような広報を展開するのだろうか
JINBN編集部では、グーグル検索のインデックスを突然削除される、という問題の取材のため、先の番号に2006年4月18日から25日まで15回ほど電話を掛けた。担当者はいつも不在で「メッセージを…」という音声だけが鳴る。JINBNの電話番号、取材担当者の名前、用件を計5回ほど留守電に入れたが電話は来ない。仕方なく別の電話番号、同社の広告部署に連絡を取った。担当の女性は広報の不手際を謝りながら「広報担当に連絡させる」と答えた。しかし電話は来ない。もう一度その女性に連絡を取ったところ「担当者にメールとメモの両方で伝えたのですが…」とだけ言った。
記者発表は、通訳なしで、米国本社の人間が一方的に話す
グーグルはいつもこんな対応をしているのだろうか。関係者に聞いてみた。
「うちの編集部員も困っているんです」
そう話すのは、パソコン雑誌では大手の出版社役員だ。電話を掛けても留守電ばかり。たまに新製品などの案内がダイレクトに届く。
そして、こんなことが起きる。案内をもらって記者発表の場に行くと、米国本社の外国人が2人出てきて、30分ほど一方的に話す。通訳はつかない。だから記事を作るのに苦労する事が多いというのだ。その役員は、
「広報が全く機能してないわけではないが、マスコミに対しきちんとケアができない状態が非常に長く続いている」
と嘆く。
グーグルが日本法人の最新情報を伝える公式ブログ「Google Japan Blog」を開設したのは06年3月1日。代表取締役の村上憲郎社長は最初の挨拶で「皆さんに少しでも Google を知っていただけるように、という考えで始めました」とコメントした。しかし、そのブログを見てみると、社員と花見に行ったとか、新入社員のインターン経験とか身内ネタで、グーグルについて知りたいことが殆ど載っていない。
真剣にグーグルを広報したいのかどうか全く疑わしい、と報道関係者やユーザーに思われても仕方がないような内容だ。
日本の広報に問い合わせても無駄?
ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「グーグルの日本広報に問い合わせても無駄なことが分かった」と話す。日本の広報が回答できる権限は非常に小さく、少し突っ込んだ話題になると、米国本社に直接聞いてほしい、という形になるようだ。
「しかもアメリカの上層部は日本の事情をよく知らないため、回答に長い時間がかかったり、意味のわからない回答が来たりする」
大手新聞社の記者はグーグルの広報体制についてこんな見方をする。
「日本進出の頃はそれなりにPR活動をしていたと思う。しかし、会社が大きくなり問い合わせが増えた事によって、仕事がこなしきれなくなったようだ」
日本法人では広報はたった1人。自社ホームページのプレスリリースコーナーが1年以上も更新できないでいる。全世界のインターネットユーザーの半数以上がグーグル検索を使っている。そんな世界的コミュニケーションの基幹になっている会社なのに、「広報不在」は奇妙だ。