「グーグル支配」という言葉がある。欧米ではグーグルが検索エンジンとして圧倒的シェアを持ち、技術的にも存在感を示しているからだ。しかし、日本ではインターネットユーザーの70%近くがヤフーを使い、グーグルはその半数にしかすぎない。なぜ日本でグーグルはヤフーに勝てないのか。
全世界で、自分の家の衛星写真を見られる。グーグルは、そんなことも可能にしている
グーグルの魅力は技術力の高さだ。検索結果を表示する速度、ヒットさせる精度の高さでは群を抜く。それでいて、シンプルで使いやすい。また、スケジュール管理システムや、衛星写真を使ったマップなどサービス分野でも最先端技術を展開している。それが海外で支持される大きな理由だ。
ヤフーとグーグルの利用者数を比較してみる。インターネット視聴率調査のネットレイティングスによれば、2006年3月の調査では、米Googleのシェア54.5%に対し、米Yahoo!は28.2%だった。さらに欧州ではGoogle優位が目立ち、英Googleは70.4%、仏73.7%、独は66.3%といずれも圧倒的だ。これに対して英Yahoo!は15.6%、仏は11.7%、独は10.1%と大きく水を開けられている(数字は全インターネットユーザーに対する比率)。
ヤフー優位は日本独特の現象
しかし、日本では状況が一変する。ヤフー検索は64.5%、グーグルが34.7%。MSNが16.0%、gooが5.5%で、日本でヤフーは欧米とは全く違う強さを見せている。
ネットレイティングス社広報の西村総一郎氏は、ヤフーの検索サービスの圧倒的シェアについて、「日本独特の現象です。ヤフーブランドは日本でそれだけ定着している」と話す。
ヤフージャパンが設立されたのは1996年1月。グーグルが日本でサービスを開始したのが2000年8月だ。4年半の開きがあり、先行したメリットが大きい、と見るIT業界関係者も多いが、それだけでは無いようだ。
「グーグル―Google既存のビジネスを破壊する」(文芸春秋社刊)など、IT関連著作の多い佐々木俊尚氏は、「グーグルが、日本国内の有力ポータルサイトと組むことができなかった」のが出遅れの原因と見ている。
研究者集団といわれるグーグルは、技術を追求するための投資と人財を惜しまないが、ニュース配信やチャット、オークション、生活情報などのソフト提供には関心が薄かった。検索技術がいくら優れていても、それだけではだめで、ポータルサイトと組まなければトータルなユーザーのニーズには応えられない。
グーグルは欧米で大手ポータルサイトと組んだ
「グーグルは欧米で、大手ポータルサイトに検索エンジンを貼り付け認知度を上げた。アメリカではAOLと組んだ」と佐々木氏は話す。そして、ポータルに集まったユーザーがグーグルの技術力に驚き、口コミでユーザーの数が加速度的に増えていく。それが欧米の現状だ、というのだ。
日本には00年に上陸したグーグルだが、すでにヤフーが圧倒的な地位を占めていたばかりでなく、多方面にわたるサービスを提供するポータルサイトが完成していた。追撃するgooもmsnもユーザー獲得のためにヤフーに負けないだけのポータルサイトを目指し、独自の技術力で競い合っていた。グーグルが手を組んで戦えるような有力なポータルサイトは残っていなかった。
日本のヤフー広報では、サイト上の様々なサービスの充実が人気の要因だ、と説明する。ショッピングや音楽・映像配信などサービス数は06年4月現在で118。IDを発行する会員制も急速に広がっている。06年3月にログインしたユーザー数は1,580万ID。検索ユーザー拡大にもつながる だけに、今後こうしたログインサービスにも力を入れる構えだ。
先の佐々木氏は、今後のヤフーVSグーグルについて、
「グーグルを技術系とすれば、ヤフーは文科系、といった感じだ。特色が異なるため、住み分けになるだろう。ただし、欧米については今後もグーグル独占が拡大していくのではないか」
と予測している。