ヤフージャパンは「検索の表示に手を加えること一切無い」
 では国内の検索エンジンはどんな対応をしているのか。
 ヤフージャパンの広報は「検索の表示に手を加えることなど一切無い。仮にスパム行為があったとしても同じだ。もちろん、警察が関係する犯罪行為(不正な口座の売買など)は別だが」と話す。ポータルサイトのgoo(グー)でも、公序良俗に反するものや申請を受けて削除すると判断したものは除くと「当社に提供いただいている情報は全て流すのが原則だ」としている。グーグルのように、有名大手企業をいきなり削除することは考えられない、というのだ。
 今回の“事件”でサイバー社が打撃を受けたかというと、そうでもないらしい。インターネット視聴率調査会社のネットレイティングスでは「サイバー社の削除された週の検索者数、ページビュー共に、過去と比較しても影響は見られない」(広報の西村総一郎氏)という。サイバー社広報も「ユーザーから問い合わせが来ると覚悟していたが殆ど無かった」と明かす。その理由をネットレイティングスの西村氏は「日本ではヤフーが強く、サイバー社へのアクセスもヤフー経由が圧倒的に多いため」と分析している。
 グーグルの2005年通期決算は、純利益が前年の約3.7倍の14億6500万ドル、売上高が前年比92.5%増の61億3,800万ドルと急激な伸び。Web分析サービス会社WebSideStoryが2006年3月にまとめた検索シェアは世界で62%、アメリカで55%、イギリスではなんと75%だった。その強大さが「傲慢に拍車をかけている」とも揶揄され、グーグルからの削除は日本でも「グーグル村八分」「グーグルの検閲」と囁かれる。
 先の西村氏は「すべて検索できるユーザー志向のエンジンがいいのか、規制の厳しいエンジンがいいのかは、これからユーザー自身が判断すること」と話す。三菱総合研究所情報通信技術研究本部の高橋衛主任研究員は、06年2月15日の米下院外交委員会公聴会でグーグルなどが中国のインターネット検閲に協力したと厳しい批判を浴びたことを例に出し、
 「ネット検索大手の立場で、企業に対しては高圧的、中国には膝を折る。ダブルスタンダードな会社だと笑う人もいる。ネットという自由な空間の中で、この勢いで業績を伸ばし続けられるのかという疑問も出ている」と皮肉る。
 こうしたグーグルの支配が広がることに危機感を持ったヨーロッパでは、独自の検索エンジンを立ち上げる動きも出ているようだ。