阪急ホールディングス(HD)が、村上ファンドの保有する阪神株を取得する可能性が強まっている。大借金会社が2,000億円ともいわれる大規模な買収をして大丈夫か、という見方も出ている。
HDは2006年4月18日、阪神電気鉄道株の取得に関し「関係強化についての検討に着手した」とコメントした。村上世彰氏が率いる投資ファンド(村上ファンド)が保有する阪神株の全株式(発行済み株式の約45%)を取得する方向で交渉に入っている模様だ。実現すればHDが阪神電鉄グループを手中にするとともに、関西私鉄の再編に発展する。しかし、「有利子負債が9,000億円以上ある大借金会社で、商売ベタ。球団も手放した阪急さんが、阪神を買ったり経営するのは無理ちゃいますか!?」という声も聞かれる。
株主から訴訟を起される可能性
名門球場も名称変更か?
HDが村上ファンドから株を買い取る手法は、買い取り価格を提示するTOB(株式公開買い付け)になる見込みで、阪急のTOBに村上氏側が応じれば売買が成立する。その額は2,000億円規模とされる。06年4月18日現在で株価は1,000円~1,020円だからだ。村上ファンドが株を取得した平均は700円だった。
しかし、株式取得には結構なハードルがある。高値での買い取りになればHDの株主から「損失を出した」と訴訟を起される可能性があること。さらに9,000億円以上という有利子負債がのしかかっている。これは「バブル期に土地買収投資で膨らんだこと。さらに、線路や車両などへの鉄道投資も過大だった」とHDでは説明する。
阪神の膨大な資産うまく活用できるか
それほどの借金を抱えて2,000億円の投資は可能か、とHDに質問してみた。しかし、「検討に着手したばかりで、買収額がどれくらいになるかはわからない」と答えるのみだった。また同社は、07年の創立100周年に向けた大事業を抱えている。梅田阪急ビル建て替え事業、茶屋町開発、宝塚ファミリーランド跡地開発…と目白押しで、こちらもトータルで数千億の投資が必要とされているのだ。それらのカネは用意できるのか。
他にも、不安材料がないわけではない。阪神を傘下に収めた場合、本業の鉄道事業で大阪-神戸路線が競合する。
ただ、約7万m2ある甲子園球場の簿価はたったの800万円。阪神百貨店の7,000m2の簿価の900万円など、これを時価総額に換算すれば膨大な資産になる。HDとしてはこれらの不動産資産をうまく活用し、投資額を回収する腹積もりのようだが、TOBが成立したとしても、こうしたシナリオ通りいくかどうかは保証の限りではない。