日本経済新聞社の30代広告局社員がインサイダー株取引で利益を上げていたことが発覚、担当役員らの処分を行ったが、マスメディアとしての信頼が大きく揺らいだ。経済界からは「日経はライブドア事件を責められるのか」という厳しい批判も出ている。
日経各紙。社員によるインサイダー取引で、マスメディア全体に対する信頼が大きく揺らいだ
この広告局員は2006年2月までの数ヶ月間、上場企業の株式分割などを告知する「法定公告」の掲載前後にインターネットで10以上の銘柄の株を売買して数千万円近い利益を上げていた。証券取引法が禁じるインサイダー取引にあたる。本人は「ゲーム感覚で繰り返した」と語っている。
杉田亮毅・日経社長は記者会見で「衝撃と恥ずかしさという気持ちだ。05年春、有力取引先でインサイダー取引が浮上した際、『広告局インサイダー取引規制関連規約』をつくリ、 "ポケットに入れて持ち歩け"と言っていた。あくまで個人的な不正行為だ」と述べた。
マスコミ業界全体の信用問題だ
「法定公告」というのは決算や新株発行、配当や株式分割など経営に関わる重要事項を株主らに周知させるため商法で株式会社に義務付けられている。公告は日刊新聞や官報への掲載が必要。最近、ホームページも認められているが、日刊新聞では日経が圧倒的なシェアを持っている。
こうしたこともあって今回の日経社員のインサイダー取引は産業界にも大きな衝撃を与えた。企業の社員はこう批判する。
「わが社も"日経は株主によく読まれている"ということから日経に法定公告を出している。経済報道に強い日経の社員がインサイダー取引をするなんて言語道断。こんなことしていたら、日経の記事そのものまで信用できなくなる」(自動車会社社員)
大手新聞社などマスコミからも批判の声が上がる。
「マスコミに勤務する人間は一般の企業の人たちより情報が早く確実に入ってくる。法定公告の内容も新聞の出る前に知ることができる。だからこそ、一般企業より高い倫理観が必要で、日経は我々まで裏切ったことになる」(全国紙記者)
業界全体の信用問題だ、というわけだ。