東京証券取引所がこのところ何度も重大なシステムトラブルに揺れている。相次ぐ不祥事を受けて東証では今後、抜本的なシステム改革に着手する。
05年11月、株式取引システムがおよそ3時間にわたって全面ストップしたのに続き、同12月には新規上場株に関する売買システムの不具合が原因で、証券会社が誤発注をキャンセル処理できずに市場が大混乱。さらに06年1月には"ライブドア・ショック"で急増した取引にシステムがパンクし、全銘柄の売買停止に追い込まれるという、世界の主要市場でも前例のない事態に陥った。
起こるべくして起こったトラブル
相次ぐシステムトラブルは業界全体に影響を与える
このため、06年4月からの3年間で500億円のシステム投資を実施。「約定(取引成立)処理能力を現行の1日最大500万件から700万~800万件に引き上げるなど能力増強を急ぎ、市場の信頼を取り戻したい」(西室泰三会長兼社長)考えだ。
東証の現行システムは大手ITベンダーの富士通に設計を委託し、約10年前に導入された。コンピュータの耐用期限は04年末。ハード面ではすでに"陳腐化"の域に達しており、それを継ぎ接ぎに継ぎ接ぎを重ねることによって「何とかもたせている」(幹部)というのが偽らざる状態だ。ここにきてのトラブル頻発は、その意味で「起こるべくして起こった厄災」(証券筋)といえなくもない。
どうやって資金調達するのか
無論、東証側もシステム全面更新の必要性はある程度認識していたに違いない。しかし90年代初頭のバブル崩壊で、日本では株式取引が長期にわたり低迷。処理能力にゆとりのある状態が続いたことで緊急性が薄れ、これが結果的に「油断を生じ、後手を踏ませる形となった」と東証関係者は悔やむ。
とはいえ、仮に東証が早期に次期システム開発に取り掛かろうとしたにしても「資金面からいって困難だった」(事情通)のもまた、実情だ。東証の収益源は、参加証券会社から取引額に応じて徴収する負担金(=場口銭)で成り立っている。その負担金収入が相場低迷で思うようにあがらず、利益確保にさえ汲々とする状態が続いていたからだ。
「だから、その場しのぎの投資しかできなかった」と東証幹部は打ち明ける。向こう3年間で500億円という巨額のシステム投資。だが、肝心の資金調達手段は全く明らかにされていない。