スペシャル 日本でのビジネスはなぜ難しいのか
(1)なぜ談合はなくならないのか

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調整がつかない場合、「天の声」を聞く

役所は公共事業を通じて、民間にカネをばらまく「所得の再配分」を図る(写真: 国土交通省)
役所は公共事業を通じて、民間にカネをばらまき「所得の再配分」を図る(写真: 国土交通省)

   多くの場合、発注側の技術者と受注側の技術者は同じ分野の専門家で、大学などを通じた技術屋仲間であることが多い。例えば東京大学の工学部土木課の卒業生は、成績1番が大学の研究室に残り、2番は建設省に入って道路局に務め、3番は民間企業で道路技術者になる、などと言われている。つまり仲間なのだ。
   日本の公共事業には「産業福祉」の思想が根強くある。役所は事業を通じて、民間にカネをばらまく。これは「所得の再配分機能」とも呼ばれている。税金で吸い上げた資金を所得の低い地方に公共事業で配分する。道路やダムはインフラとして必要であるが、それ以上に道路工事やダム工事で地元に落ちるカネが大事なのだ。同様に、経済の発展過程では官による民間企業の育成がなされた。
   利益率の高い公共事業を平等に発注することで企業を育てる。分け与える思想をベースにした産業振興策である。「官製談合」つまり役所主導の談合はこうして始まった。
   談合は時として調整がつかないことがある。いくつかの業者が譲らず決まらない場合、「天の声」を聞くことになる。紛争の調停者の役割を果たすのが「天の声」で、業界で一目置かれる重鎮や有力政治家などが登場することがあるが、基本的には「役所の意向」が尊重される。その役割を果たすのが技術系職員のトップである技監であることが多い。直接本人が発言することはなく、業界の有力者や政治家と調整し、不透明な経路を経て間接的に伝えられる。
   公共事業は、形は競争入札になっていても基本的には「配給」なのだ。事業を割り振る権限を持つことで、民間より上位に立つ。官尊民卑と言われるように日本は官と民は対等ではない。戦後、天皇中心の国家体制は崩壊したが「天皇の官吏」だった官僚は形を変えて権力を維持した。上級公務員試験は天下の優等生が順位を競い合う進学競争の頂点でもあった。

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