アニメの無料配信がアニメファンの人気を集めている。視聴できる会員は既に490万人を超え、来年8月までには1,000万人を目論んでいる。しかし、当面は赤字。それでも株価は上昇、帳尻はあっているのだという。
電通の調査で、昨年のインターネット広告費は、前年比153%の1814億円となり、ラジオ広告費(1795億円)を初めて上回り、テレビ、新聞、雑誌に次ぐ第4の広告メディアとなった。09年には5,600億円になるという。
今後5年で3倍に膨れあがるとされる広告費を、どんなコンテンツが吸収していくのか。ネット広告のぶん取り合戦の中、注目されているのが株式会社USENだ。05年4月に無料視聴ができる"ネットTV"の「Gyao」を立ち上げた。完全無料の配信は日本初。過去に上映またテレビ放送された映画やアニメ、スポーツ映像だけでなく、オリジナルの番組を含め約500の番組が見られ、番組は日々更新されている。運営費はテレビ局と同様にCM収入で賄う。
30代のアニメファンが飛びつく
最初に「Gyao」に飛びついたのは30代のアニメファン。「ガッチャマン」「ハクション大魔王」などの懐かしいアニメに反応した。運営はまだ赤字だ。しかし、当面は赤字でもいいのだ。USENの株価は「Gyao」の発表から右肩上がりになっているからだ。
05年は、ライブドアのフジテレビ買収騒動や、楽天のTBS合併騒動などIT業界は既存のテレビ局取り込みに走った。「放送と通信(ネット)の融合」。表向きは「優良なコンテンツを多く提供、保有すれば、ページビューを稼げる。つまりは、広告が集まるという話だが、ライブドアがフジテレビの親会社ニッポン放送の大量株を保有したのは僅かに3ヶ月間だった。この3社の株価は上がり続け、ライブドアが同社の株を売却した利益が2,000億円にもなった。
日本のIT関連企業の場合、「実業」よりも株の分割などの操作や、株の時価総額を背景にした企業買収で成長してきた。IT企業というよりも「投資会社」「トレーダー」に近い。
元々は有線の音楽配信会社
USENはもともと店舗や家庭に独自に構築した有線を使い音楽配信をしていた会社だ。それが、回線を持っている強みから、ここ数年、インターネット事業に力を注いできた。
社長は、宇野康秀氏。1963年8月12日 大阪生まれの42歳。若きIT企業の社長達の「兄貴」と呼ばれている。今でも楽天の社外取締役を務めている。
「Gyao」については、無料がうけているものの、「番組が古い」「長々とCMを見せられうんざりする」という悪評もある。TV局関係者からは「本来、番組をパソコンで見るものなのか?」という疑問も出ている。日本テレビなどもネット番組配信を始めたが、1番組99円などの有料制を取っている。これは広告料収入でやっていけるのか、という疑問と、地方の系列局への配慮だ。
今後、「Gyao」の運営が黒字になるかは定かではないが、日本のIT企業の価値観である株価の上昇という戦略は、今のところ成功している。