合併にともなって多様なサービス展開が期待される三菱UFJフィナンシャルグループ
日本の4大メガバンクの一角を占めてきた2つの金融グループ、三菱東京フィナンシャルグループとUFJホールディングスが05年10月経営統合し、総資産200兆円に迫る世界最大の金融機関「三菱UFJフィナンシャルグループ」が正式に誕生した。新金融グループが経営目標に掲げるのは、09年3月期での株式時価総額「世界トップ5入り」(畔柳信雄社長)だ。
06年1月には持ち株会社の下でグループ中核の2つの商業銀行、東京三菱銀行とUFJ銀行を合併させ、名実ともに一体化し、収益力強化を目指す。
収益力強化、ポイントはリテール業務
05年3月期で1.7兆円の連結営業純益(合算値)を2.5兆円に引き上げるなど、現在10番手以下にとどまっている時価総額のランキングを米シティグループやJPモルガンチェース、英国系の香港上海銀行(HSBC)などに匹敵する地位にまで高めようというわけだ。
収益力強化に向けて、最大の牽引役に据えているのがリテール業務の飛躍的拡大だ。同部門が稼ぎ出す収益比率は、05年3月期で全体のおよそ16%(営業純益ベース)。これを09年3月期には「35%へと大幅にアップさせたい」と首脳陣は意気込む。知恵と行動力が帰趨を決める投資銀行業務とは異なり、リテールは巨大な装置産業。効率的な運営体制と、機能的な基幹コンピューターシステムがあれば「規模の利益が比較的追求しやすい」(グループ幹部)との読みがある。
今後3年半で6,000人を削減する
効率的な運営体制構築の決め手は何と言ってもリストラだ。新グループでは今後3年半で6000人の人員を削減するのをはじめ、国内170拠点のリテール重複店舗を統廃合。さらに本部機構の簡素化などで総額2400億円の経費圧縮を進める計画だ。
ただ問題は基幹システム。現在、東京三菱銀のシステムはIBM製の大型ホストコンピューターを使った集中処理。これに対してUFJ銀では日立製作所製の小型サーバーを駆使した並列分散型のシステムを採用している。グループでは合併後も当面は、これらを併存させていくことになるが、共通の新システムが完成し、完全統合が実現するのは「早くても07年12月」(首脳)。それまでは既存のサービスこそ維持できるものの、戦略的な新商品の開発や販売は事実上、停滞を余儀なくされることになる。装置産業であるにもかかわらず、肝心要の「装置」が整っていない状態だ。
「最初の1、2年は統合費用がかさむこともあり、収益伸び悩みは覚悟のうえ」。畔柳社長は強気の姿勢を崩さないが、トップ5入りへの道のりはけして平坦ではなさそうだ。