公認会計士が不正に手を染める土壌

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   日本4大監査法人の一つである「中央青山監査法人」社員の公認会計士4人が05年9月13日に東京地検特捜部に逮捕された。繊維の老舗企業「カネボウ」の粉飾決算を指南した証券取引法違反の容疑である。公認会計士が不正に手を染める土壌が日本には存在している。

   監査法人というのは5人以上の公認会計士が集って作っている。企業の貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などの決算書が正しいかどうかを調べるには、一人や二人の公認会計士では力が及ばないということから、法人が監査をする仕組みになっている。現在日本には約160の監査法人があるが、中央青山、トーマツ新日本あずさの4つが日本の企業の9割以上の監査をしている。売上高で見ると、トップはトーマツで次いで中央青山、新日本、あずさの順になっている(05年3月現在)。

中央青山監査法人のホームページ
中央青山監査法人のホームページ
 

   中央青山は1,700人の公認会計士を抱えて5,300の企業の監査をしている。こうした名門の監査法人の公認会計士が逮捕されたのは初めてのことである。カネボウの監査は30年以上も続けてきた。70年ごろ粉飾決算が常態化してきているにもかかわらず、毎年のように株主総会に「適正」という意見を出してきた。子会社の毛布加工販売会社が巨額の赤字を出して、連結決算に入れると本体が赤字になってしまうということから、子会社の持ち株を減らして連結からはずすという指導をした。このほか、売上高が少ない時には架空の売上高を計上することも黙認してきた。

聞かれれば「会計操作のやり方は教える」

   カネボウは巨大な負債を抱えて産業再生機構に入ってしまい、不正が明らかになってしまった。そうでなければ、「粉飾」は永遠に闇の中だったかもしれない。中央青山はカネボウだけでなく足利銀行からも、監査役4人と共に11億円もの損害賠償を請求されている。
   日本の企業は監査法人を自由に選べる。このため不利な監査をすればすぐに監査法人を変えてしまう。いわゆる「オピニオンショッピング」である。このため監査法人は企業のトップの顔色をうかがってきた。
   カネボウは中央青山に対して年間1億円もの監査報酬を出していた。こうした得意先を失うと監査法人の経営が苦しくなってしまうため、会社側の言いなりになるだけでなく、積極的に決算書が良くなるように指導してきた。景気が良くなれば決算が好転し、こうした不正が隠されるという甘い考え方からである。
   監査企業から「業績を悪くしたくないから、なんとか理屈をひねりだして」と要求されるといったことは、公認会計士なら必ず経験する、といわれている。グループ会社の扱いについて聞かれれば「連結対象からはずれるやり方がある」と教える。現実には「はずし」が違法かどうかのグレーゾーンが多い。明らかな不正でなければ、顧客である監査企業の要望に応える、というのが基本的スタンスだ。公認会計士側に言わせれば、カネボウ事件も「無碍(むげ)には断れなかった。それで犯罪といわれても」というのが本音だろう。

「身内」に甘すぎる体質

   米国では、01年にエネルギー大手エンロンの大規模な不正会計事件が発覚し、監査を担当した大手会計事務所のアンダーセンが解散に追い込まれた。
   この反省から、米国は企業に対する厳しい会計報告と罰則を定めた企業会計改革法(サーベンス・オクスリー法(SOX法))を02年に制定した。
   日本でも公認会計士法を改正するなど対策を進めてきたが、まだ業界の取り組みは甘い。日本公認会計協会は、山一証券や日本長期信用銀行など、90年代に粉飾決算を行って破たんした企業を担当した監査法人や公認会計士を処分するかどうかについて、いまだに結論を出していない。監査法人が弱い立場にあるのは確かにせよ、「身内」に甘すぎる体質は否定できない。
   ちなみに中央青山監査法人の奥山章雄(おくやま・あきお)理事長は01年から04年まで日本公認会計士協会の会長をしていた。

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