不良債権が激増する可能性もゼロではない
激減した不良債権処理損失に関しても、油断はできない。現在、日本の大手銀行の財務内容に関しては、金融監督当局である金融庁がほぼ毎年定期的に検査に入り、銀行の信頼性を担保する仕組みになっている。金融庁の検査で融資先の信用リスク判断が甘い、と指摘されれば、銀行は貸倒引当金の積み増しなど新たな不良債権処理を迫られる。
しかし、検査が本格化するのは実は9月から。今後の検査の動向と結果次第では、06年3月期にかけて不良債権処理損失が逆に激増する可能性もゼロではない。実際、三井住友銀行の05年3月期決算では、銀行側が当初4500億円と見込んでいた不良債権処理損失が、金融庁検査でほぼ倍増。結局、最終赤字に転落している。
融資の焦げ付きや貸倒れなどに伴う不良債権処理損失は、信用リスク管理に手馴れた欧米の優良行でも、貸出残高に応じて0.1-0.2%の割合で発生するとされている。その意味では、60兆円規模の貸出資産を持つみずほの不良債権処理損失が4-6月でわずか58億円という事態こそが、むしろ「異常」といえるのかも知れない。