将来を展望するための3つのポイント
ポイント1
ダイエーは生き残れるか
産業再生機構の下で再建を進められているダイエーの行方次第では、業界の地図がさらに大きく変わる可能性がある。ダイエー再建のために再生機構が2004年11月8日までに公募していたスポンサー企業には当初、イトーヨーカ堂やイオン、大手商社の三井物産、丸紅、住友商事など50社程度が名前を連ねた。
産業再生機構は05年1月、ダイエーの経営再建を支援するスポンサーを選ぶ2次入札で、スポンサー候補を同業のイオン、総合商社の丸紅、投資ファンドのキアコン(東京)をそれぞれ中心とする3グループとすることを決定した。3グループは今後、ダイエーの事業再生計画案をまとめ、2月下旬の3次入札に参加する。3月上旬には最終的なスポンサーが決定。ダイエーは3月下旬に臨時株主総会を開き、スポンサーなどから役員を迎え入れ、新経営体制を発足させる。再生機構はダイエーに33・4%出資し、支援企業とともに再生を進めていく。
「広告の品はレジにて半額」のポスターが並ぶイトーヨーカドーの冷凍品売り場
しかし、ダイエーのスポンサー企業の決定は、大手スーパー業界にとって次なる再編劇の始まりを意味することは間違いない。
当初有力とされたイトーヨーカ堂のほか、外資の米流通大手ウォルマート・ストアーズ、米投資ファンドのリップルウッド・ホールディングス、米穀物大手カーギルを中心とするグループは残れなかった。2次入札には7つの企業グループが応札。このうちイオンは京セラと組み、マイカルなどの再生を手掛けた実績をアピールした。丸紅は当初、リップルウッドなどと連合していたが、2次入札から日系ファンドに連合相手を変更。食品などに重点化して再建を目指す再生機構の基本方針に沿って支援する姿勢を強調した。キアコンは伊藤忠商事と一緒に応募。
再生機構は、263ある既存店舗のうち、総合店を中心に53店舗を閉鎖・売却する方針。一方、食品スーパーを5年で100程度出店する考えで、食品のノウハウを持つかどうかが支援企業選びの鍵となっている。
ポイント2
攻勢かけるディスカウント店とどう共生するか
流通業界の再編の追い風になってきたのが、ディスカウントストアや専門小売店の躍進だ。 多店舗化を図り、大量仕入れを進め、大量販売で規模の経済を追求する。しかも、即金決済、POSの導入で売れ筋商品情報を即時に収集する。こうした手法で、売り上げを大きく伸ばしてきたのが、コジマ、ヤマダ電機、100円ショップのダイソーに代表されるディスカウントストアである。
またカジュアルウエアのユニクロ(正式な社名はファーストリテイリング)は、日本にはなかったビジネスモデルで成功を収め、大手スーパーの衣料品販売のシェアを侵食してきた。低価格ながら高品質、企画から製造、販売まで一貫して手がける新業態だ。ユニクロは年間販売点数2億点のうち、約9割が中国からの輸入と言われ、2000年秋には国内の繊維団体がセーフガード(緊急輸入制限措置)を政府に発動する一幕も見られた。
「ユニクロ」のファーストリテイリング、医薬品のマツモトキヨシ、総合ディスカウントストアのドン・キホーテ、玩具の日本トイザらス、100円ショップのダイソーは、時代のニーズを先取りした新・流通革命のさきがけとも言われている。 百貨店や大手スーパーの再生のカギは、こうした新・流通革命の旗手たちとどのような共生関係を築き上げることができるかにかかっている。
ポイント3
外資は救世主になれるのか
英国のテスコ、米のウォルマート、ドイツのメトログループなど、海外の巨大小売店が日本市場への本格的な上陸を狙っている。たとえば、西友はウォルマートの支援により経営変身中だ。一時期は日本の流通業界はイトーヨーカ堂vsイオンvsウォルマート・西友連合の3強時代になると言われたこともあったが、ウォルマートによる西友の再建は必ずしもうまくいっていないという観測もある。外資がどのような次の一手を打ち出すのか。業界の再編を展望する上では、見逃すことのできないポイントだ。