将来を展望するための3つのポイント
ポイント1
競争に打ち勝つため、営業体制を強化できるか
東京電力の八丈島風力発電所
自由化や規制緩和が進めば、電力やガスの市場は新規参入組が増加することによって、これまでの売り手市場から買い手市場に性格が変わっていくことが予想される。各会社とも大口の優良顧客を他社に奪われないように、営業体制を強化する必要性が高まっていこう。独占企業がようやく普通の企業に変わらざるを得なくなったのだ。
しかし営業の強化と言っても、電力やガスと言う“製品”の差別化は難しい。価格の安定と安さが決め手となる。そのため、電力会社やガス会社は設備投資の大幅な絞込みを行い、有利子負債の圧縮を図ることで、ライバルとの競争で料金を引き下げてもしっかり利益の出せる体質作りが必要になってこよう。
一方で、普通の会社への変身に伴う副産物ではないが、電力会社やガス会社が利益を意識するあまり、原子力発電所や火力発電所の建設など新規の設備投資を渋るようになると、安定供給に問題が生じてくる恐れがある。特に電力は大量の貯蔵や緊急の輸入などが難しく、消費のピーク時には停電などが頻発する可能性も高まってこよう。
ポイント2
新規事業への展開できるか
電力やガスの本業が自由化や競争の激化によって収益が落ち込むようになれば、新規分野で収益を埋め合わせようという動きが強まることは必至だ。
電力の小売自由化に伴って、これまで電力やガス会社に課せられていた兼業規制も撤廃され、新しい事業領域の開拓に精を出す企業グループも出始めた。たとえば、東京電力グループでは、2005年度までに同グループ外に対する売上高を1999年度に比べて5000億円以上拡大することを目標にした大胆な計画を推進中だ。エネルギー・環境、情報・通信、住環境・生活関連の3分野が重点育成分野として掲げられている。
ポイント3
ガス業界で中小企業の淘汰・再編はどこまで進むか
電力業界と異なり、ガス業界には230社強に及ぶ中小事業者が全国に広がっている。その大半が、年間の売上高が数億円から数十億円と言う零細企業だ。これまでは政府の指導による地域独占に守られてきたが、自由化によって競争が激しくなれば淘汰・再編に追い込まれる中小企業がこれから増えてくることになるだろう。