歴史
10年前から電力の自由化が急ピッチで進む
電力業界は長い間、電気事業法によって既存の10電力会社が電力の小売事業を独占してきた。しかし10年前から、電力の規制緩和、自由化が急ピッチで進められている。
1995年12月の電気事業法の改正によって、電力以外の会社が10の電力会社向けに電力を販売する「電力の卸売り事業」への新規参入が解禁された。電力会社6社が実施した卸電力の入札では、新日本製鉄、大阪ガス、東燃ゼネラル石油など多数の非電力企業が応募した。
2000年3月から施行された改正電気事業法では、大口顧客向けの電力の小売事業の自由化が開始された。さらに03年3月からは、需要家の対象が広げられ電力小売の自由化は加速した。電気の使用規模が2000㌔㍗以上で、2万ボルト以上の高圧線で受電する大口需要家が対象となった。具体的には、大工場、デパート、大型ショッピングセンター、ホテル、高層ビル向けの小売である。04年度からは、中規模工場やスーパー向けが自由化の対象となった。
05年度から電力取引所が開設される
年間53万kwhの発電能力を有する大規模な太陽光発電設備「サンヨーソーラーアーク」(岐阜県)
そして07年度以降には、一般家庭や小規模商店向けの電力の小売が自由化される予定である。これによって、電力の小売の自由化は完成に向かう。
また電力会社が余剰電力を相互に融通する取引市場として電力の経済融通市場があるが、従来からの大手電力会社に加えて、01年4月からは新規の参入企業にもこのマーケットが開放されるようになった。
こうした自由化の結果、従来の10電力会社による地域独占供給の体制が崩壊して、電力の小売分野でも外資を含めた新規参入業者との厳しい価格競争が始まろうとしている。
ガスは大手4社が80%を独占
ガス業界でも電力業界と同様に、自由化の何が押し寄せている。これまで日本の都市ガスは、全国に約240社ある事業者による地域独占体制が続いてきた。先に紹介した東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの大手4社が全体の販売シェアの約8割を占め、残りの2割を全国約230社の中小企業で分け合っている。中小企業が多いことが、電力業界との大きな違いである。
ガス業界の規制緩和は、1995年から大規模工場やビルなど年間契約量200万立方㍍以上の顧客を対象にスタートした。さらに99年からは、同100万立方㍍以上の顧客を対象に直接販売する小売が自由化された。04年からは50万立方㍍以上の顧客が自由化の対象とされ、07年からは10万立方㍍の小規模向上やビルの顧客向けが自由化される予定だ。
家庭用などの小口需要を対象とする完全自由化については、実施時期は未定となっている。このように自由化や規制緩和は、電力、ガス会社の経営にも大きな変化をもたらすことが確実だ。