就職活動をしている学生たちに「内定辞退セット」(日本法令)が大人気という。「企業に失礼なく、円滑に内定辞退できる」というこのセットは税込み550円で、去年(2019年)12月に発売されるとたちまちに売り切れになった。
いまは学生1人が内定をもらう企業は平均2.4社。就職するより、内定辞退する方が難しいというわけだ。「内定辞退を電話でいうと、すごいボロクソに言われた」「君に何万円かけたと思っているんだと、2~3時間拘束された」「訴えてやるといわれた」――人気の背景には、こんな恐怖経験があるという。
そればかりか、「断ったら、名前が業界に知れ渡ると脅しのようなことを言われた」(女性)、「もう1回考えてみなさいと、美味しい焼肉に誘われた」(男性)、「親に連絡するぞと、親を使って圧をかけてきた」(女性)など、「就活終われハラスメント」の略で「オワハラ」という言葉もある。内定者に他の企業を受けさせないため妨害する行為といわれる。
親も呼んで囲い込む「オヤカク」
企業側は企業側で、内定辞退をやめてもらおうと必死だ。内定辞退されてしまうと何十万円というコストが無駄になる。入社後のイメージを上げるために、社員と接触するなど「囲い込み作戦」に力を入れている。
学生本人だけでなく、親に向けた説明会やセミナー、家庭訪問、親同席の懇親会などを開いている。内定辞退をさせないように、親の意思を確認する「オヤカク」という言葉もある。
キャスターの立川志らく「親の言いなりにやる奴など、ろくなものにならないと、昔は言っていましたね。でも今は、私も弟子がいますが、親に聞くと、みんな子どものやりたいことをやらせてあげるといいますね」
「内定辞退セット」を監修したハナマルキャリア総合研究所の上田昌美代表取締役は、「一番よくないのは黙ってフェードアウトしてしまうこと。会社に迷惑をかけるだけでなく、大学の信用も落とします。辞退するときは、きちんとマナーで対応してほしい」と話した。