メディアは国内問題から目をそろすな!
今のメディアは、われわれが知らなければいけないこと、考えなければいけないことを報じているだろうか。マレーシアで「暗殺」された金正男の事件をこぞって報じているワイドショーを見ながら、そんなことを考えた。
少し前は韓国の朴槿恵大統領のスキャンダルを連日垂れ流していた。他国のことをやってはいけないというのではない。だが、国内に重要問題が山積しているときに、このような他国の騒動に労力を使うのは、国内の問題から目を背けさせる政府の陰謀ではないかと勘ぐりたくもなる。
毎日新聞が報じた「令状なしの違法なGPS捜査」問題。安倍政権がごり押ししている「共謀罪」が成立すれば、アメリカの「愛国法」と同様、権力側が「こいつは怪しい」と思えば、盗聴、GPSで四六時中の監視、アメリカの諜報機関NSA(国家安全保障局)がやっているメールを含めたネットのやりとり情報の閲覧など、何でもありになってしまうのである。
福島第一原発2号機の原子炉格納容器内で最大毎時650シーベルトが計測された。福島第一原発事故はいまだに継続中なのに、報道の少ないこと。
「森友学園」国有地払下げ問題は根が深い
安倍首相夫妻と親しい学校法人「森友学園」が、国有地をタダ同然の値段で払い下げられた問題は、安倍という人間の根幹に関わる重大疑惑である。
ノンフィクション・ライターの石井妙子は文藝春秋3月号で、昭恵夫人は「スピリチュアル界の有名人の影響を受け、日本を神聖視する危うさ」があり、「安倍首相も毎晩寝る前に祝詞のようなものを唱えている」と書いている。
先週も書いたが、安倍が子どもたちを、彼の偏った教育思想で染め上げようとしているおかしさを、森友学園問題から言及できるはずだ。大メディアは本腰を入れてこの問題を追及すべきだと思うが、動きが鈍い。週刊誌も今週は週刊文春がワイドでサラッと触れただけである。
トランプ大統領の一挙手一投足を毎日伝えるなら、日本の似非トランプ、安倍のことをもっと注視し、彼がやろうとしていることを国民に知らせるべきである。
長々と前書きが長くなり、また担当の某氏に怒られそうだから、本題に入ろう。
金正男暗殺事件の推理あれこれ
まずは金正男の暗殺事件から。この事件の不可解さは、なぜこの時期に、ほとんど北朝鮮に影響力のない正男を、金正恩は殺さなくてはいけなかったかということである。
残念ながら、それについて頷ける解説をしている週刊誌はどこもない。週刊文春は、金正男の近くにいた九州地方出身で北朝鮮籍を持つ60代のKという男が、常に正男と一緒だったのに、今回はなぜか同行していなかったと報じている。だが、「本国(北朝鮮)=筆者注)から何らかの情報を事前に得ていたのではないか」というだけで、謎は謎のままだ。
正男は、日本のメディアの人間とも親しく、中でも、2012年に文藝春秋から『父・金正日と私 金正男独占告白』を出した東京新聞編集委員の五味洋治は何度も正男に会い、今回も「哀悼手記」を週刊文春に書いているが、今回の事件を解くカギは何もない。
週刊新潮は、新潮らしくやや斜めからこの事件を見ている。週刊新潮は、誰が一番笑ったかを考えると「韓国秘密グループ」が浮上すると、韓国謀殺説をとる。
根拠は、北朝鮮側にいま正男を標的にする根拠がない。事件の直後の16日(2017年2月)が金正日の生まれた祝日だから、金正恩が正男を殺したと正日に報告するのは不自然。
当然だが、監視カメラがたくさんある空港ではなく、殺すならもっと別の場所ややり方があったはずだ。朴槿恵の次の大統領は北朝鮮と近い人物がなると予想されるから、北朝鮮の仕業に見せかけて韓国の情報機関が「蜜月」を阻止する目的でやったというのである。
人数の多い割りには素人のような殺害の仕方や、その後の逃走方法など、北朝鮮がやりましたという「証拠」をあちこちに残す杜撰さは、北朝鮮と見せかける意図があったと思えないわけではないが、やはり弱いのは、いまなぜ金正男殺しなのかというところであろう。
週刊現代では近藤大介編集委員がグローバルなアメリカの戦略の中で、北朝鮮の問題を考えろとレポートしている。
今から2カ月ほど前に、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア担当国務次官補がひっそり来日していた。
彼はトランプ政権でも留任している。ラッセルは、トランプ政権になればオバマよりさらに踏み込んだ政策をとるから、日本は覚悟をしてもらいたいと言ったそうである。
ワシントンとしては、北朝鮮をアメリカ、中国、ロシアとで「信託統治」しようと考えているというのだ。しかし、これをやるなら「北朝鮮の後見人」を任じる中国をどう説得するかにかかっている。
それがもしできたとして、金正恩を第三国に移らせ、誰をもってくるのか?
長男の金正男が消されたいま、平壌には次男の金正哲がいるが、彼は女々しくて政治家向きではないという。
本命は現在駐チェコ大使の金平日(62)だそうだ。彼は金日成と後妻の間に生まれ、朝鮮人民軍の護衛司令部などの要職を歴任したが、金正日が後継に決まったことで、国外に転出した。
一時、金日成は彼を呼び戻し、後継を印象づけたのだが、その直後、金日成が「怪死」して、金正日が総書記になり、彼はふたたび国外に放逐されたという。
これには正恩体制が揺らいでいることが前提になるが、金正恩体制は現在盤石で、中国は不本意ながらこの体制と和解したという見方があると、ニューズウィーク日本版が伝えている。
「正恩は驚くほど巧みな権力掌握の手腕を発揮し、短期間で権謀術数の手腕を身に付けた」(ニューズ)
私には、トランプのアメリカと事を構えようとしている金正恩が、衆人環視の中で正男を殺したとは考えにくい。かといって韓国説にも無理がある。マフィアがらみの金銭のもつれによる見せしめのための殺人の可能性もあり得るのではないかと、思い始めているところである。
小池都知事の「都民ファースト」は口先だけ
さて、小池都知事対石原慎太郎の対決が来月早々に見られそうだが、週刊誌のほうも二分してきて、今週は石原の四男・延啓(50)に、石原が知事時代に「親バカ血税」を注ぎ込んだと特集している週刊文春は小池派、先週と今週で石原の独占インタビューをやって、小池批判をやらせている週刊新潮が反小池派のようだ。
週刊文春が追及しているのは、石原が都知事時代につくった若手芸術家の育成事業「トーキョーワンダーサイト」で延啓を重用し、ここには約7億6000万円もの補助金が投入されたという「都政の私物化」である。
石原の血税の滅茶苦茶な使い方は追及されて然るべきである。だが、石原のいう小池批判にも一理あると思う。
小池は豊洲移転問題の結論を延ばし続け、驚いたのは、これを夏の都議選の争点とするという発言である。
石原ならずとも「豊洲移転を選挙の道具に使おうとしている」といいたくなる。さらに「小池知事は"安全"と"安心"をごちゃ混ぜにして、問題を放置している不作為の責任を認識するべきだと思います」という点も頷ける。
「小池知事の当面の目標は、自らが率いる都民ファーストの会が都議選で"過半数"を占めることです。(中略)彼女にあるのは権勢欲だけですよ。それでは東京都知事は務まらない。"行政の長"に必要なのは決断です」
都政を長年壟断してきた石原にいわれたくはないが、小池の口先だけの「都民ファースト」にもいい加減ウンザリしている。
都議選前に豊洲移転問題に片を付け、その彼女の「決断」を都議選で都民に問うのが筋である。重大問題を決断できないで、都民に丸投げしようなどというのは知事失格だと思う。
宅配制度を守るため消費者がすべきことは?
ところで、私はアマゾンのヘビーユーザーだ。本やコピー用紙はもちろんのことコーヒーや果物、ティッシュやトイレットペーパーまでアマゾンから買っている。
なぜか? 歩いてすぐのところにコンビニがある。駅の近くにはスーパーが2つある。そこで買えばいいのだが荷物になるし、トイレットペーパーなどは持ち歩きたくない。それに早く頼めばその日のうちに配達してくれるし、コンビニより安いのだ。
その他にも、アマゾンミュージックやビデオ、小説などを読み上げてくれるAudibleなど、アマゾンがなくては夜も日も明けない状態である。だがこうした便利な配達も、物流がなければ成り立たない。
現代は、アマゾンだけではなく、セブンイレブンなども個人宅への配送を手がけようとしているが、物流のヤマト運輸や佐川急便が、ここから撤退したら完全に成り立たなくなると警鐘を鳴らしている。
アマゾンの配送を請け負っている運送会社社員は、繁忙期になると1日に300軒を回ることはざらで、しかも、時間指定の商品が多く、常に時間に追われているからストレスは尋常ではないという。
その上、仕事が忙しければ賃金が増えるのが常識だが、物流業界では労働時間が長くなっているのに、給与が下がるという「異常」な状態におかれているというのだ。
厚労省の調べだと、道路貨物運送業の給与は99年をピークに減少している。それに労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間なのに、中小小型トラックドライバーは2580時間と長く、単純に時給に換算すると約1500円と、コンビニの深夜バイトと変わらないという。
よくいわれるように、アマゾンの荷物1個の配送単価は何十円と低く抑えられている。
それに私もよく思うのだが、アマゾンは何を頼んでも箱で持ってくるため(日本郵便は封筒)、郵便受けに入らない。そこで個々の部屋まで持ってくるのだが、出かけていれば再配達ということになる。本や小物などは郵便受けに入れてもらえば、それですむのだが、どうしてそうしないのだろう。
多いときは日に何度も宅急便が扉を叩き、煩わしいこともある。
ドローンで家の前まで届ける実験をやっているそうだが、まだまだ実用化は先のことであろう。
アマゾンは、プライム会員になれば配送料無料で、文庫本一冊でも届けてくれる。そのために町の書店は次々に潰れていく。出版社も、書店としての存在感を圧倒的にしたアマゾンにはなかなかモノをいえない。
だが、週刊現代のいうように「消費者は物流にコストを支払おうという意識が低すぎる」のはたしかだ。「物流は社会の命綱」といわれるそうだが、モノがあっても運ぶ人がいなくては何もならない。
われわれ消費者もそうだが、アマゾンなども、日本で生き残りたいのなら、物流に対する殿様商売を改めなくてはならないはずである。
あまりの安さと時間の指定にアマゾンと取引をやめた佐川急便、それにヤマト運輸、日本郵便が一致団結して、アマゾン支配を打ち破るべく交渉を始めれば、アマゾン側とて譲らざるを得まい。
2月23日のasahi.comがこう報じている。
「ヤマト運輸が、荷物の扱い量の抑制を検討する見通しになった。今春闘で労働組合から初めて要求があったためで、インターネット通販の普及と人手不足でドライバーなどの労働環境が厳しくなっていることから、労使で改善を模索する。配達時間帯指定サービスなどの見直しにつながる可能性もある」
消費者にとっては宅配料が値上げになるが、致し方ない。そう考えないと、いくらアマゾンに本を頼んでも、いつまでたっても届かないということになるかもしれない。