「塩どき」と飄々82歳、藤村俊二さん逝く 振付師、俳優、ダンサー、声優とさまざまな顔

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   俳優の藤村俊二さんが25日(2017年1月)に亡くなっていたことがわかった。心不全、82歳だった。ヒョイと消えるからと、ついた愛称が「おヒョイさん」。家族が用意したハガキには、自筆で「塩どき」とあった。最後までかっこよく、ヒョイと消えた。

   最後の仕事が「ぶらり途中下車の旅」のナレーションだった。飄々と人を食ったような調子が受けた。その203回目の収録が、2015年10月10日。終わって、スタッフと軽食をつまんで楽しくおしゃべりをして帰ったが、その後脳出血で倒れたのだった。

   闘病中、様々に書き残したメモがあったが、中に"塩どき"というのがあった。「このまま此処に居ては 格好悪くなると思った時に 其処から居なくなる時」、「俊二」という篆書の印が押してある。まさに人柄そのまま。家族はこれをお知らせとした。

   多彩な人だった。俳優では不動の脇役。ダンサー、振付師、声優では「ぶらり途中下車」で渋い味を出した。また、60歳になって「大人の行き場所、同年代の仲間がくつろげる場」として、ワインバー「O'hyoi's」も持った。壁のレンガはイギリスから取り寄せ、職人まで呼ぶこだわりようだった。

   演出家になろうと早稲田の演劇学科に入った。が、理屈ばかりの内容にうんざり。「当時の演出家は、譜面は読めない、踊れない、セリフを言えばなまるのに、なんで文句を言うんだと」中退。東宝芸能学校・舞踏科に入学したが、出演が嫌でよくいなくなるので、ついたあだ名が「ヒョイ」だった。のちに「お」がついて「おヒョイ」になったのだという。

   ヨーロッパを放浪して、振付師にもなった。有名なドリフの「8時だよ、全員集合」のイントロ「エンやーこらや~」は、藤村さんの振り付けだ。なお演出家を目指してはいたものの、テレビ出演するようになり、「巨泉×前武ゲバゲバ90分」などでの飄々とした持ち味が人気となってしまった。

   56歳で胃がんが見つかったが、「自分の体のことを言うのはみっともない」とひた隠しにして、千葉で入院・手術。それもバレないように産婦人科病棟にいたという。胃は3分の2を切除。他にも肺気腫、腹部大動脈りゅうなど、さまさまを抱えていたが、決して表には出さなかった。

   決して主張しない、「しずかな美学」は、独特だ。「夢を言うのは好きじゃない。これをやりたいと思う時にやれる状態にしておくのが僕の夢」だと。仲間の森山周一郎さん(82)は、「地のままというか、そのままで世間で通っちゃった。これは芸ですよ、立派な」という。

2年前、店をたたみ静かに消えた

   演技も自然体だったが、身の処し方もそうだった。2年前、店をたたんでナレーションだけになった時、自ら消えたという。「誰にもいうな。俺は静かに消えていくからって」と森山さんは言う。

   松嶋尚美は、「かっこいいし、外人さんかと。『おヒョイ』をミドルネームかと思ってた」(爆笑)という。「話も聞いてくれるし、ほんまにいい人やった」

   加藤浩次「我々がテレビで見ているイメージと変わらない」

   取材した西村綾子が、「みなさん嬉しそうに話してくれました。人柄ですね」

   昨日(1日)近しい人だけで密葬が行われて、そこで配られたのが、先の「塩どき」。他にもたくさん書き残したものがあるらしい。

   加藤「書き残した言葉全部見たいな」

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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