リオ五輪の閉会式で、次期開催地東京をアピールした8分間の「引き継ぎ式」パフォーマンスを演出したクリエイターが舞台裏を語った。犬のお父さんのCMなどで知られる佐々木宏さん、スタイリッシュな映像表現で知られる菅野薫さん、Perfumeなどの海外公演を成功させた演出・振付家MIKIKOさん、音楽監督の椎名林檎さんだ。(椎名さんはビデオ出演)
4人に話があったのは昨年12月(2015年)だったという。五輪エンブレムや国立競技場の不祥事で大変な時期だった。「逆境は好きなので、火中の栗を拾ってやろうかと」(佐々木)、「嬉しかった。でも緊張しましたね」(菅野)、「お断りできなかった」(椎名)
演じられたパフォーマンス鮮烈な印象を与えた。赤一色の床が日の丸に変わり、各言語で「ありがとう」。被災地福島の子供たちの人文字も出る。東京の街を舞台にアスリートや人気アニメのキャラクターが登場し、ドラえもんとスーパーマリオの仕掛けから会場中央に安倍首相が現れるサプライズもあった。CGと現実のダンスの組み合わせで「SEE YOU IN TOKYO」で終わる。
杉浦友紀キャスター「キャプテン翼が現れた時は、会場から拍手が起こりました」
佐々木「日本で広告をやる場合は多くて1億人。それが、テレビを含めると20億人とかが見る。想像できなくて」
菅野「100か国以上なので言葉に頼らず、ドラえもん、マリオで意味がわかってもらいました。文化が共有されているんだとわかりました」
リオ五輪「引き継ぎ式」ヒントはPerfumeニューヨーク公演だった
組織委の混乱と予算の制限は「引き継ぎ式」の準備にも影響した。リオに連れて行けるパフォーマーは50人。8万人収容の巨大スタジアムには200人は欲しい。MIKIKOさんが考えたのはフレームだった。エンブレムのイメージを取り込んだフレームをパフォーマーがさまざまに動かして広がりを出した。
MIKIKO「50人を少なく見せないために、1人を拡張してみせようと考えました。しかし、広がりすぎるとスカスカに見える。そこで一糸乱れぬダンスに集中し、その緻密さが日本的というイメージを与えたらしいです」
難問は現代の東京を8分間でどう見せるかだった。「日本らしさ、東京らしさ、を考える時が一番意見が分かれました。気にかけるボーダー(境界)がそれぞれ違っていたんです」(椎名)
行き着いたのは現代に息づく「見えない伝統」だった。ヒントは、MIKIKOさんが手がけた2014年のPerfumeニューヨーク公演だ。映像と音楽とダンスがシンクロする現代的なパフォーマンスだが、海外の聴衆はその中に日本特有の規律や調和を感じているのではないかと考えた。
MIKIKO「プリーツとか歌舞伎の早替えとか、仕掛けは伝統的、見た目は現代的なものが、落とし所になりました」
菅野「二律背反ではなくて、連なっている文化だという発見でしたが、決まるまでに議論と時間を費やしましたねえ」
MIKIKO「海外の客がなぜPerfumeを見て熱狂するのか。現代的な音楽、衣装で踊ってるんだけど、きっと精神とか細やかさがこぼれ出て見えているんだろうと思います。計算しちゃダメなんだろうと」
賛否両論あった安倍パフォーマンスについて、佐々木が告白した。「マリオで人選を進めていたら、森(喜朗)会長から言われてのけぞりました。ブーイングが起こったりしたらわれわれの責任ですし、政治にはいろいろある。それを表現でどうこうするのは大変な事です。難しい」