日本列島にはわかっているだけで約2000か所の活断層がある。このうち注意が必要なのはマグニチュード7以上の地震を引き起こす可能性がある「主要活断層と呼ばれる97か所だ。熊本地震の震源となった布田川断層もその一つで、「30年以内にM7・0程度の地震が発生する確率が0・9%」と予想されていた。
しかし、主要活断層に注意していればいいというものでもないらしい。地震学者の武蔵野学院大・島村英紀特任教授は「見えていない活断層もあり、どこで地震が起きても不思議ではない」と不気味な指摘をする。
地上に住宅やビル多く進まぬ調査
産業技術総合研究所の「活断層評価研究グループ」で活断層を発見に取り組んでいる宮下由香里研究員によると、2枚の航空写真を実体鏡で細かく観察し、不自然な段差や横ずれがあれば活断層を疑い、深さ5メートル、長さ10メートほどの穴を掘って確認していく。しかし、関東地方は「住宅や構造物が多く地質調査がしにくいうえ、堆積物がたまり地下の活断層が見えにくい」(宮下研究員)という。このため関東地方は主要活断層が少ないように見えているだけなのだ。つまり、調査が遅れているのである。
隅田川河口が震源だった安政江戸地震
それでも、東京の中心部に推定断層と呼ばれる隠れた地震断層の存在があることがわかっている。日本活断層学会の豊蔵勇元副会長は散歩をしていて違和感のある地盤、地震データ、マンションやビルの工事関係者からの地盤データなどで、東京都心の8~9か所に推定断層を見つけた。
防衛省近くの市谷推定断層、東京ドームのある飯田橋推定断層、南側に迎賓館のある九段推定断層、皇居・二重橋にかかる推定断層、銀座推定断層、築地推定断層、浅草推定断層、勝鬨橋推定断層、月島推定断層で、いずれも南北に断層が走っているという。
ボーリング調査で確認ができないため推定でしかないが、島村教授は「地表に割れ目が見えているのだけを活断層と言っており、これらも地震断層である可能性が高いですね」という。1855年の安政江戸地震は「内陸で起きた地震では最大の被害を出しており、古文書から見ると、隅田川の河口が震源地でした。首都圏の下は活断層がいっぱいあるんです」(島村教授)
青木理(元共同通信記者)「南海トラフ地震や首都圏直下型地震が起こる確率は30年以内に70%といわれています。見えない活断層を含め、日本中どこにいても地震に襲われる恐れがあることを考え生活するしかないですよ」