広島県東広島市の山陽自動車道下り線八本松トンネルで、17日(2016年3月)午前7時半ごろ発生した多重事故は、車5台が炎上し2人死亡、67人がケガをする惨事となった。トラック運転手がスピードを落とさず渋滞の列に突っ込んだのが原因とみられているが、トンネル内にスプリンクラーは設置されていなかった。
「たちまち黒い煙充満」「1分逃げ遅れてたら死んでた」
広島県警によると、事故現場から6キロ先で別の事故があり、八本松トンネルまで渋滞がつながっていた。そこへトラックがスピードを上げたまま突っ込み、ぶつけられた車が次々と炎上した。トンネル内は黒煙が充満し、命からがら避難した人は「1~2分しないうちに煙でトンネル内が見えなくなった」「1分でも逃げ遅れたら命を落としていたかもしれない」と話している。
八本松トンネルは全長800メートル。高速道路のトンネルについて国が定めた非常施設の設置基準では、最も厳しいAAランクに次ぐAランクだ。Aランクのトンネルには火災検知器、排煙設備または避難通路、水噴霧設備(スプリンクラー)などの設置義務はなく、必要に応じて道路会社の判断で設置すればいいとなっている。
八本松トンネルには50メートルごとに消火栓と消火器が設置されているが、スプリンクラーは設置されていなかった。もともと、この非常施設の設置基準は1979年に7人が死亡した日本坂トンネル事故(東名高速)を教訓に見直され、81年にできた基準で古い。
コメンテーターの前田浩智(毎日新聞前政治部長)は「スプリンクラーがあれば事故の規模は変わっていたかもしれないですね。国の基準は35年前のもので、車の性能や交通量が変わってきているので考え直す時期に来ている」と指摘している。