タイムスリップ物は大好きだ。幕末とのタイムスリップと言えば、あの名作「JIN-仁」(TBS系2009年10~12月、2011年4~6月)があるが、こちらは深夜枠だし、だいぶ軽いのはいいとして、工夫次第でもう少し面白くなりそうな気がする。
時は幕末、土佐勤王党の中心人物、武市半平太(錦戸亮)は投獄され、切腹を命じられた。しかし、切腹したはずが、目覚めたのは平成時代の田舎「神里村」の入口だった。田んぼの中の道に倒れていたのだが、ちょんまげに袴姿だから、たちまち不審者として警察や村役場に通報されてしまう。
そこで逃げ込んだ先が、小学校の元校長・佐伯(森本レオ)が営む学習塾だった。ひょうひょうとした佐伯は驚きもせず、武市をかくまう。武市は塾の子供たちを教えることになるのだが、「サムライせんせい」というわりには、子供たちとの関わりがそんなに感動的というわけではない。
幕末のさむらいに教えられるのは書道と剣術ぐらいしかないのかもしれないが、それならいっそ「子曰く......」と昔のりっぱな人の道を説いて、それがけっこう子供たちに通じるという具合にしたらどうかしら。
この塾、つまり佐伯と娘の春香(比嘉愛未)の家がとっても素敵だ。適度な格式のある大きくてしっかりした田舎の古い家で、なつかしい感じなのだ。
今風の恰好でパソコン使いこなす坂本竜馬
現代の道具や機械を見た武市の反応、また現代人を自分の尺度で解釈する可笑しさなど、シーンとしてはたくさん出てはくるのだが、どうもイマイチ、インパクトが足りない。タイムスリップ物の面白さはカルチャーギャップに直面した人間がどうするかにあるのだから、もっと強烈にメリハリをつけてもいいのではないか。
もう一人、幕末から来て現代にすっかり適応している人物として、坂本龍馬(神木隆之介)がいる。こちらは今風の恰好をしてパソコンを使いこなし、東京でジャーナリストをして暮らしている。ちょっと意表を突く設定が面白い。軽薄に見えても龍馬のこと、ただ者ではなく、現代においても何か画策しているらしい。
幕末に志を抱いた二人の眼に現代がどう映っているのかが、もう少し出てほしいなあ。彼らが今の日本を見たらどう思うのか、幕末の志士たちに聞いてみたいと時々考えるものだから。
武市を「ペータ先輩」と呼んでなついてくるシングルマザーで元レディスの理央(石田ニコル)がかわいい。(金曜日よる11時15分~)