薬の多剤処方が高齢者に深刻な健康被害をもたらしている。複数の慢性疾患を抱える高齢者は複数の病院、診療科を受診し、多剤処方を受けるケースが多く、薬の相互作用などによる副作用が起き、ふらつきや転倒、運動障害などにつながるという。
また、薬の種類、回数が多く、飲み方が複雑になることで、「飲み間違いや飲み残しなどの問題が浮かび上がってきた」(国谷裕子キャスター)。患者が飲み残す「残薬」は、在宅の患者だけで475億円分に上り、残薬は治療上の深刻な問題を引き起こす。
多剤副作用抑えるためにまた薬
茨城県水戸市の水戸協同病院には、薬の副作用が原因と見られる高齢者が次々と入院してくる。救急車で運ばれてきたある高齢者女性は、数か月間も原因不明の転倒が続き、体中に痣ができるほどだった。
総合診療科で薬の服用状況を調べ、副作用を起こす処方を洗い出したところ、この患者は統合失調症と診断されていて、7種類の薬を日常的に服用していた。その抗精神病薬と便秘に対して処方された漢方薬が低カリウム血症という副作用を起こし、運動障害が起きたことがわかった。さらに、副作用の治療としてあらたな薬が追加され、症状が悪化していた。
総合診療科の金井貴夫部長はこう話す。「かなり不適切な処方に該当します。ひとつの薬が適切だとしても、相互作用、相互の関係はどうなのか。そこまで教育する必要があります。それが現状ではなされていない」