統一地方選で当選した女性議員は2159人、14.2%だった。4年前が12.8%、その前が12.0%だから、この程度で増えたといえるのかどうか。衆議院の女性議員は9.5%で、OECD加盟国中最下位だ。これが日本の女性の政治進出の現状である。
自民党女性局長・三原じゅん子「女性候補者の応援に行きたくても行けない」
高松市の市議選に立候補した太田安由美さん(34)は、実家の古書店を手伝いながら小学6年生の娘を育てるシングルマザーだ。市議になって同じ境遇の女性を支援したかった。だが、大きなカベが立ちはだかった。
まず父の育治さんが反対した。この地域では政治は男のものだという意識が強い。女性が意見を言うと「ふう(体裁)が悪い。角が立つ」と言われる。父親は折れたが、次があった。学校の同窓生600人に呼びかけたのだが、返事は5通しかこなかった。長い付き合いの友人も政治には関わりたくないといった。
「サーッと友だちが引いていく感じでした」という。告示の1か月前、チラシをもって1軒1軒歩いたが、ひどかった。「女のくせに」と目の前でチラシをポイと捨てられたこともある。「カベは厚くて高い、果てしない」
選挙のスタッフはネットの呼びかけに応えてくれた人たちだった。「働く母親支援や子どもの貧困対策」を訴えて回る。帰宅はいつも深夜だが、寝入った娘が毎日書いてくれる手紙が支えだった。「がんばりすぎないように」「ムリしないこと」とあった。娘が「かっこいい」という母は、40人中8位で初の当選を果たした。
自民党でも女性国会議員の応援がうまくいかなかった。富山県議で2期目を目指した奥野詠子さん(34)は、党の女性局に応援を求めたが、同じ選挙区の男性候補者の同意が必要だった。
県連幹事長は「応援が来て1日張り付いてやられたら、浮動票をとられる。オレの票がなくなる」とあからさまだ。結局、応援は呼べず、奥野さんは当選したものの、前回より2000票近く減らした。
自民党女性局長の三原じゅん子参院議員は「行きたくても行けない。もどかしいですよ」と話す。県議選では55人の女性候補のうち18人にしか応援を出せなかった。安倍内閣のうたい文句「女性の活躍」が聞いてあきれる。
一方で、大阪府島本町(人口3万人)は定数14人の半数が女性だ。議場での質疑も活発だし、弁当代を9割カットしたり政務調査費の導入を見送ったりと、女性の視線が生きる。
土台があった。大阪のベッドタウン化した30年前から、地域の母親たちとの意見交換会が続く。ボール遊びの場がほしい、通学路が狭いなど身近な話題が飛び出す。聞き役の戸田靖子さんも専業主婦の参加者だった。議員6年目。参加者は「意見を言ったら通るかもしれないという気持ち」「私たちが町を作っているんだと思った」と話す。選挙の投票率は常に全国平均を上回る。前回衆院選では、全国平均の52.66%に対して、島本町は63.28%だった。