女子マラソン解説者の増田明美が世界選手権(2015年8月・北京)の代表選考について、日本陸連に噛みついた。マラソンに一家言のある司会の小倉智昭も「勝つためのレースをするのは大事です。これおかしいと思う人はかなりいるんじゃない」と首を傾げた。
横浜国際優勝の田中智美が落ちて、大阪国際3位の重友梨佐
世界選手権・女子マラソン代表に有望と見られていたのは次の4選手だった。横浜国際マラソンで優勝(2時間26分57秒)した田中智美(27)、名古屋ウィメンズマラソン3位(2時間22分48秒)の前田彩里(23)、同4位(2時間24分42秒)の伊藤舞(30)、大阪国際マラソン3位(2時間26分39秒)の重友梨佐(27)だ。そして、10日の陸連理事会で決まったのは、好タイムを記録した前田と伊東は順当としても、優勝している田中が外され、ほぼ同タイムで3位の重友が選ばれた。
この不可解な選考に、増田が理事会終了後に行われた記者会見でこう質問した。「ビックリしました。横浜国際で優勝した田中さんが妥当で選ばれると思っていたが、どうして同じ26分台の重友さんなんですか」
これに酒井勝充・強化副委員長はこう答えた。「田中選手の優勝は非常に評価はあるんですが、これから世界で闘うというなかではレース内容に物足りないものがあったのかな」
納得のいかない増田が「すごい主観が入っているということですよね、選ぶ側の。皆さんこれでいいんでしょうか」と食い下がった。再度の追及に戸惑ったのか、酒井副委員長は「われわれもプロとしてやってきて、われわれは世界を目指しています。国内で勝つことより、世界で勝つことを意識してほしい」と反論したが、増田は「説明を聞いてもすっきりしないですね」と納得いかない様子だった。
タイム優先か、勝つためのレースか・・・
小倉こう話す。「重友さんのタイムは(田中選手に比べ)18秒差でいいんですけども、田中さんは勝つためのレースをしていた。ペースメーカーの速いペースについていかないで、途中から競り合って勝った田中さんの方がレース実績としてははるかに大きなものがあったんではないでしょうか。勝つためのレースは大事ですよ。
一方、陸連は早いペースについていかないと陸連の目標とするタイムにならないから、前半ついていくレースをした重友さんを上としたんでしょう。それなら最初からそういう選考理由を言っておかないとね」
42キロ強を走るなかで、自分が得意のレース運びで優勝を狙うのがマラソンアスリートだ。優勝よりもレース運び重視ではアスリートは何を目標にしたらいいのか戸惑う。