この季節、毎年楽しみにしているものがある。グラミー賞授賞式中継だ。その昔、某テレビ局では上層部と社員がこぞって見学に行くなど、とにかくエンタメ界のお祭り騒ぎであることは間違いない。
ここで繰り広げられた演出が、その後さまざまなアーティストのコンサートや歌番組でパクられるわけだ。
グラミー賞授賞式「出演者」マスク被ったようなゴテッゴッテ
さて、今年はどうか。ド派手なパフォーマンスで知られるケイティ・ペリーはシンプルな白ドレスに影絵の演出だ。4冠を達成したサム・スミスのパフォーマンスもゲンカルをバックに、メアリーJ・ブラージとのデュエットといういたって簡素なものだった。
究極にシンプルだったのは、白ホリバックにポール・マッカートニーとリアーナと話題のコラボ曲を披露したカニエ・ウエストが行ったソロパフォーマンスだ。床に埋め込んだサーチライト1本の上で歌うというもので、時に明度の差が激しすぎて顔が暗くて映らない時があった。そぎ落としの美学が感じられるステージだった。
一方で、我が道行くのは今年で56歳になるマドンナ。いつもと同じボンテージファッションに身を包み、クリスタルのキラキラな闘牛士のお面をつけたマッチョ男性ダンサーが続々と登場し、半ケツに鍛え上げた太ももを見せつけながら、こちらもいつものお決まりダンス。最後は宙づりになって舞台からはけていった。これぞマドンナワールド、アクが強くて、もう時代的にもお腹いっぱいっす。
熱いパフォーマンスの数々だったのだが、あついといえば、どのアーティストのメイクもすさまじく厚い。もう、人間の皮膚感がまったくないような厚塗りメイクの女性ばかりが登場してくる。まるで特殊な塗料でプリントされたマスクを被っているみたいに、顔全体が人工的だ。
はち切れそうにプクんとして表面はツヤツヤ。そこにハッキリクッキリ描かれた眉に何層にも塗って光と影を操るアイシャドーに顔全体のシャドーメイク。1度コップに付いたら強力な洗剤でも落とすのが大変そうなほど光り輝くリップ。そんでもって、アメリカ人お決まりの白く輝く歯をにっこり見せて笑うのだから、眺めているこちらは、それだけで胃がムカムカしてくる。強烈な香水のにおいと密閉された肌が呼吸できなくて息苦しい感じが想像できる。