居酒屋ブーム!案内人・吉田類「いい酒場3つの条件」コの字カウンター、安くて気軽・・・

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   上野から20分、京成立石駅前(葛飾区)は戦後のヤミ市から続く大衆酒場が軒を連ねる。ここがいま大人気なのだ。週末になると午前中から行列ができる。かつては客は地元だけだったのが、遠方から、しかも若者が来る。

   創業42年の「江戸っ子」は平日でも150人と10年前の2倍だという。女将の 上野紀子さん(74)は「若い人がいい。嬉しいね」

   仕掛人らしい人がいた。自称酒場詩人・吉田類さんだ。全国の酒場を巡り歩くBS-TBSの「酒場放浪記」は放送12年目になる。関連書籍やDVDも人気で、講演会では立ち見も出る。大衆酒場ブームを「日本が誇るべき飲酒文化。それなしでは生きていけない『ひだまり』みたいな、居心地のよさに気づいたのでは」という。

女性のひとり飲み・・・盛り場は家と職場に次ぐ第3空間

   吉田さんのいういい酒場の条件は3つ。まず、コの字型のカウンター。客と客、店員と客の距離が近い。次が安くて気軽。客は誰とでも話もできれば、ひとりにもなれる。最後が家族のような雰囲気だ。

   横浜・新子安の市民酒場「諸星」の女将・諸星香代さん(77)は客が注文したレバニラを「あの人は固めが好み」という。これには客の方が驚く。これだ。

   東京都内のアパレル企業に勤める高橋真奈美さん(32)は5年前、偶然に大衆酒場を知った。以来、ネットの「おじさん酒場」のチェックを欠かさない。きょうは武蔵小山、あすは北千住と足をのばす。いつも女ひとりで暖簾をくぐる。4年前に母を亡くし、父は1人で故郷にいる。隣のおじさんに、時に父の面影を感じたりするという。

   戦後の混乱期でも、日本に酒が切れることはなかった。高度成長期にはビヤホール、バブル期は高い酒が売れ、失われた20年では居酒屋チェーン。 ただ、 この10年は若者のアルコール離れがいわれ、居酒屋業界は4万店舗が姿を消し、 チェーンも業績を落としている。そこへ大衆酒場である。

   この現象を早稲田大の橋本健二教授(社会学)は、「常在戦場である職場とまったく違う時間と空間を求めているんでしょう。居酒屋チェーンですらシステム化、マニュアル化の世界で味気ない。ところが大衆酒場は違う。1人でも入りやすい。話もできる」という。社会学では家と職場の次に、盛り場を第3空間というのだそうだ。「人間にはどうしても必要なものなのです」

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