産地の生鮮食品が即日配達される便利な世の中だが、それを支える物流の現場が危機的状況を迎えている。トラックのドライバー不足が深刻になっているのだ。
昨年(2014年)の暮れ、九州や北海道で収穫した農産物が東京などの消費地に輸送できない事態も起きた。スピーディーで正確な日本の物流システムは世界でもまれといわれているが、今後は「これまでのようには物が運べなくなる」(大手食品メーカーの物流担当者)と心配する。
時間指定増え午前と夕方に配達集中
ネット通販などの急拡大で宅配便の取り扱い個数は1年間(2014年)で36億個に達し、その9割はトラックが担っている。過酷な荷の積み下ろしや長時間労働の常態化などドライバーへの負担が増え、他産業に比べて賃金が安いことから若い人に敬遠されて深刻な人手不足に陥っている。
厚生労働省の統計著(平成25年度)によると、労働時間・所得は全産業平均が2124時間・469万円なのに対し、中小型ドライバーは2592時間・385万円と差がある。大手物流会社の配車担当者は「取り引きしていないような運送業者さんにも『車を探しているので車を入れていただけないか』と頼んでいます。出ている物量よりもトラックのほうが少ない」と困惑する。これがボトルネックになり、今後は企業活動や消費の停滞を招きかねないところまできている。
大手宅配会社「佐川急便」の営業所担当者はこう話す。「ホームセンターでちょっと行って買う飲料水とかゴミ箱など、あらゆる荷物が宅配の対象になっているます」
扱い荷物が増えたうえに、宅配時間の指定を希望する利用者も増えている。千葉県内にある営業所では受け取り時間の希望の6割は午前中と夕方以降に集中し、このピークに合わせるために多くのドライバーを必要としている。しかし、指定時間に配達に行っても、共働き世帯の増加で不在が多く、持ち帰るケースが3割に達している。不在対策として、女性を雇って特定の時間だけ自転車で荷物を運んでもらう新たな取り組みを始めている。
佐川急便の森下琴康執行役員は「昔は隣のおじさんに預ければすんだが、今はそんなこと許されません。今後、物量の増加に合わせてどう強化していくかが大きな課題になっていくと思います」と頭を抱える。