「増税先送りなら解散 首相検討 年内にも総選挙」「年内に解散する場合、衆院選は『12月2日公示・14日投開票』か『9日公示・21日投開票』とする案が有力だ」「GDP値が伸び悩んだ場合、増税先送りの判断と、アベノミクスの成果などを掲げて国民に信を問う考えとみられる。10%への引き上げは、1年半先送りし、17年4月とする方向で調整している」
自民党内でも多くの議員が首を傾げていた解散・総選挙が現実となってきた。慎重だった朝日新聞もけさ13日(2014年11月)の朝刊1面で「来月総選挙へ 消費増税、先送り検討」と打ったが、冒頭にあげたのは11月9日付の読売新聞朝刊の1面である。
新聞的にいえば「特ダネ」であるが、どうしてこうした断定的な書き方ができたのだろうか。『週刊新潮』によれば、この記事は渡辺恒雄主筆からの指示だったという。読売新聞政治部の関係者がこう語る。<「社説でも主張している通り、主筆は新聞に消費税の軽減税率を適用せよというのが持論です。それが無理なら増税を延期して、国民に信を問うべしというのですが、最近も甘利明経済財政相を招いた会合で主筆がこの話を切り出したことがあった。(中略)
記事では、安倍総理が公明党の幹部に解散の意思を伝えたとありますが、実際の相手は創価学会の選挙対策責任者だと聞いています」>
週刊新潮は「安倍総理の出血大博打」と書いているが、なぜ安倍首相はここへきて急に解散を思い立ったのだろう。それは10月末に政府の発表に先んじて報じられた民間シンクタンクの7~9月期の成長率予測が見るも無残な数字だったからだ。
<多くが2%台で、中には1%という社もあったのだ。このまま増税を強行すれば、来年秋以降の景気失速が現実になりかねない。再増税の見送りという噂が流れ出したのはこの頃からである>(週刊新潮)
だが、安倍首相の周りは10%増税すべしという人間ばかりだという。官邸関係者がこう語る。<「いま、安倍総理を取り巻く官邸の主要メンバーは、菅官房長官を除いて、大半が『増税推進派』になっています。旧大蔵省出身の加藤勝信官房副長官はもちろん、経産省出身の側近秘書官まで増税を容認するようになっているのです。
それと言うのも、10%の消費税増税を実現したい財務省が、官邸スタッフや増税反対の議員に対して総力で『切崩し』に奔走しているからです。これに業を煮やしたのか、11月上旬、総理が突然、『やりたいようにやっているな! 財務省の奴らは』と漏らしたことがありました。乱暴な口ぶりなので皆ギョッとしましたが、それはそれほど総理の身近なところまで財務省の息がかかっているわけです」>
この官邸関係者によれば、増税の決定権をからめとろうとする財務官僚に対して、安倍首相は明らかに警戒しているようだという。しかし、なぜこのタイミングなのか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が解説する。
<「官邸が解散・総選挙を考えているのは『いま解散したほうが得策だ』という計算もあるからです。つまり、このまま選挙をやると、自民党は現有の295議席から20議席は減らしてしまうかもしれませんが、それでも絶対安定多数を保てる」>
安倍首相の皮算用「自民党大勝無理でも単独過半数」そんなにうまくいくかな...
いわれていることだが、増税を先送りするなら安倍首相が決断すればいいことである。何百億円も使って師走の忙しいときに選挙をする必要などない。小泉元総理の「郵政民営化イエスかノーか」解散も大義のない『わがまま解散』だった。選挙は大勝したが、小泉がいなくなったら民営化反対派が主導権をとり戻し、元の木阿弥になってしまった。そのとき当選した「小泉チルドレン」たちの多くも雲散霧消した。バカなことしたものである。
週刊新潮は<後世の人たちは、これを何解散と呼ぶのだろうか>と結んでいるが、私は「自滅解散」と呼びたい。人間は過ちを繰り返すものである。安倍が第1次内閣で失敗したのも財務官僚たちが安倍の足を引っ張り、引きずり下ろしたからであった。閣僚たちのスキャンダルが次々に噴出して選挙はボロ負け、身体の問題もあって辞任せざるを得なくなった。
安倍首相はアベノミクスが末期症状を迎えているところに財務官僚のいうがままに増税したら、日本中に怨嗟の声が広がり、また同様の辞任に追い込まれるという危機感があるのだろう。おととし暮れのような大勝は無理でも、単独過半数を維持できれば、増税を先延ばしにできると考えているはずだ。それほど財務官僚たちに怯えているのだろう。意気地のないことだ。
安倍首相は特定秘密保護法や原発再稼働、憲法九条を蔑ろにしたことに対する国民の怒りを考えに入れていないのではないか。今回の全野党のスローガンは「ストップ・ザ・アベ」だけで十分である。『サンデー毎日』は「安倍自民は40議席減」と予測している。私はもっと減ると思う。