周辺住民の反対でほとんど使えない国立感染研究所村山庁舎
エボラ出血熱が世界中で蔓延する恐れが出ているが、『週刊現代』は「日本は絶対に防げない」と警鐘を鳴らしている。なぜか。東京・新宿の国立国際医療研究センターに勤務する看護師の女性はこう指摘する。
<「いまの日本の態勢では、エボラ出血熱の本格的な治療・研究はできません。患者さんから採取した血液から、エボラウイルスを分離して、その性質を調べたり、どんな薬が効くのか調べたりすることができないからです」>
エボラ感染の疑いのある患者が出た際、患者の血液などの検体を受け入れ、ウイルスの有無を確認するのは国立感染症研究所村山庁舎になるという。だが、ここは住民の反対などでほとんど使えないのだそうだ。そのため、BSL(バイオ・セーフティ・レベル) 4の施設として国の指定が受けられていないのだ。昔ここがつくられたとき、周りは畑ばかりだったが、その後、周りに住宅ができ、小学校や小児療育病院などもあるため、住民の反対運動で検査もできないという。住民の不安を考えたら無理もないというしかないのだろう。
日本人の特徴は忘れっぽいと同時に、何か起きるとすぐにパニックを起こすことである。エイズの1号患者が出たときも、日本中にエイズが広がるという風評のためパニックが起こったが、今度も一番怖いのは社会の混乱だと医師がいっている。ひどい人は報道を見ただけで過換気症候群になり、息ができなくなることもあるそうだ。
ウイルスの権威であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のチャールズ・チウ博士が語る。<「エボラの初期症状はインフルエンザに極めてよく似ている。咳はあまり出ませんが、発熱、嘔吐、筋肉痛、疲労感、下痢など。特徴的なのはしゃっくりが出ることですが、それが出始めると残念ながら死亡率は高くなってしまう」>
日本には高度な感染症に対応できる指定医療機関は、厚労省の定める特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関を合わせても全国で45機関88床しかないのだ。
航空機が発達した現在、西アフリカで発生したエボラウイルスは世界中に広がる可能性がある。空港での渡航者検疫などの水際作戦だけでは到底防ぐことはできない。最悪の事態を想定して、厚労省はエボラなどの感染症対策を大至急、本気で取り組む必要があること、いうまでもない。