都知事選は中盤に差しかかったところだが、週刊誌を見る限り雌雄は決したようである。1月30日(2014年)発売で都知事選を直接扱ったものは『週刊新潮』の「勝者は一目瞭然の『世論調査』生データ公開」1本だけ。『週刊文春』は小泉元総理を扱ってはいるものの、「小泉純一郎は生き別れの三男と和解していた!」という都知事選とは関係ない脇道のドラマである。
週刊新潮で政治部デスクが、1月23日と24日に某通信社・新聞社が行った調査についてこう語っている。<「通信社は、舛添さん37%、細川さん16%、宇都宮さん14%。新聞社は舛添さんが27%、細川さん12%、宇都宮さん7%の順でした。つまり、細川さんの支持率はほとんど伸びていません。それどころか、宇都宮さんに抜かれる可能性も出てきています」>
けさ(1月30日)、中野駅北口で細川候補の応援団、瀬戸内寂聴さんと細川夫人・佳代子さんが街頭演説をやっていたので覗いてみた。狭いロータリーなので聴衆が入りきれるかと心配していたが、拍子抜けするほどの人数しか集まっていなかった。小泉氏と連れ立ってやる細川氏の演説会はどこも溢れんばかりの人が集まっているようだが、聴衆の目当ては細川ではなく小泉なのだ。
駅で手渡されたパンフレットを見て驚いた。「W元首相の挑戦」と題されたもので、「東京が日本を変える会」が作ったものである。裏に応援している瀬戸内さん、澤地久枝さん、菅原文太さんらの名前が載っているが、表の細川、小泉が並んだ写真の細川氏のほうは墨で塗られた如くで顔はわからず、小泉氏だけがくっきりと写っているのである。候補者名も書いてないから、この選挙のことを知らない人間が見たら、小泉氏が候補者だと思うに違いない。
人気高いのは「小泉劇場」!存在感まるでない優柔不断の殿さま
このパンフレットがこの選挙を象徴している。小泉氏自らが「脱原発」を掲げて立候補すれば勝てたかもしれない。だが、自分が言ったことの責任をとらず、積極的ではなかった殿様を担いだことが戦略の失敗であること間違いない。週刊新潮で細川陣営の関係者も、出馬表明のあとの会見を何度も延期し、公開討論会も欠席するなど、メディアへの露出がどんどん遅れ、公示後もテレビなどの公開討論の誘いも断っているため、佐川急便の献金問題から追及されるのを逃げていると思われても仕方ないと語っている。
『週刊ポスト』『週刊朝日』は選挙の魔術師・小泉氏には「大逆転勝利」への秘策があると、起死回生に望みをかけているが、どの策も大勢逆転の可能性は少ないようだ。週刊ポストは細川首相が辞任を決断したNTT株4億2000万円取り引きの真相についても詳しく記述し、細川氏を首相退陣に追い込んだ村上正邦氏(元自民党参院議員会長)に佐川急便問題はでっち上げだったといわせている。
<「検察が押収していた佐川の貸付記録には、借りっぱなしになっている自民党の大物たちの名前が連なっていて、だからこそ、検察も資料が出せなかったんだ。(中略)
追及する自民党側は佐川から金をもらったままだったんだから、無茶苦茶な話だよ」>
こうした「証言」も細川氏がこの問題に触られるのを嫌がって逃げているのでは、何の力にもならない。
週刊朝日ではこんな秘策も載っている。安倍晋三首相(59)夫人の昭恵さん(51)が、細川陣営のブレーンの1人である元経産官僚の古賀茂明氏(58)と首相公邸で「密会」していたというのだ。しかも、昭恵夫人はFacebookに古賀氏と面会した時の写真を掲載して、さらに衝撃が広がったという。
<昭恵さんと言えば、昨年は「脱原発」の主張を繰り返す「家庭内野党」として、注目を集めた人物である。
古賀氏を直撃すると、「公邸で会ったのは事実だが、中身は話せません」とやけに口が重い>(週刊朝日)
細川陣営の関係者は「細川支援を打診したのでしょう」といっている。そうだとしたら話はおもしろくなるが、可能性はまったくといっていいほどないだろう。
すでに、「戦いすんで日が暮れて」の感があるが、ひと言だけ安倍首相にいっておきたいことがある。かりに舛添氏が勝ったとしても、脱原発を主張する細川氏と宇都宮健児氏の得票数を足して1票でも舛添氏を上回ったら、都民の『意思』は脱原発なのだから、再稼働は中止すべきだと思うのだが、いかがだろうか。