小泉純一郎元首相はきのう12日(2013年11月)、日本記者クラブで講演し、「原発ゼロ」をあらためて明快に語って、安倍首相の決断をうながした。メディア相手の講演7年ぶりだったが、メディアを通して国民に直に訴える小泉節は健在で、52社410人が集まった。
「総理が決断すればすぐ動く。反対・抵抗は自民党の一部だけ」
小泉はこの8月、フィンランドの核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察して、原子力発電の危うさに衝撃を受け、以来、各地で「原発ゼロ」を訴えてきた。核のゴミの処分場がない現状で原発推進は無責任だというのだ。
原発推進者からは「対案を出さずに原発ゼロをいうのは無責任」という批判が出ているが、小泉はこれに真っ向から反論した。
「10年以上前から最終処分場の問題は技術的には決着している。なぜ10年以上かかってひとつも(用地を)見つけられないのか。(福島原発)事故の前からですよ。政治の責任で進めようと思ったけどできなかった。それを事故のあと『これから政治の責任で見つけます』というのが原発必要論者の主張ですよ。メドをつけられると思う方がよっぽど楽観的で無責任」
安倍は「原発への依存度を下げていく」といいながら、アベノミクスの推進には原発再稼働は必要としていて、原子炉輸出も進めている。小泉はその安倍 に向かってこういった。
「いま総理が決断すれば原発ゼロはできる。こんなに恵まれた環境ないですよ。こんな運のいい総理はいない。野党はぜんぶ『原発ゼロ』に賛成ですよ。反対は自民党だけ。その自民党内も本音を探れば半々だと思っている。もし安倍総理が方針を決めれば、反対派はもう反対できません」
講演の数日前、自民党の石破幹事長は「原発依存度を下げるという方向性に変わりはない。小泉さんもいますぐゼロではない」と予防線を張っていたのだが、これは見事に蹴っ飛ばされた。小泉は「即ゼロがいいと思う。その方が企業も国民も専門家も準備ができる。最終処分場が見つからないんですよ。 だったらすぐゼロにしたほうがいい」
記者から「安倍首相の(ゼロへの)方向転換はあると思うか」と質問されると、「言ってもらいたいと期待しているんですよ。ピンチをチャンスに変える権力を総理大臣は持っているんです。もったいない。この環境を生かさないと」
噂される「脱原発新党」や野党再編は否定し、1人でも訴え続けなければならない問題だと語った。小泉の「オンカロ」視察後に最初に記事にした毎日新聞の山田孝男専門編集委員は、「小泉さんは世論を動かしたい。関心は世論の形成にある」という。
原発再稼働は核廃棄物処分場とセット―それでも地元は受け入れるか?
「朝ズバッ!」がきのう、東京・銀座4丁目で100人に聞いたところ、小泉に賛成が79人、反対が21人だった。
片山善博(慶応大教授)「この問題は真剣に考えないといけないですよね。処分場がない以上、原発のサイト内で10万年保管しないといけない。それを前提に、地元のみなさんを含めて再稼働OKするんですかとなる。議論の様相は変わります」
司会の井上貴博アナ「いままでは、(処分場問題に)目をつぶって推進してきたということでしょうか」
片山「処分場適地をさがしていたし、技術的な開発も進んでいます。相当な金も出したが、受け入れるところはない」
福島原発事故の国会事故調の委員を務めた野村修也(弁護士)は「小泉さんは国民に訴えている。国民に方向を示すのが役割だと言ってきた人だから、それを安倍さんにうながしているのでしょう。国民が考える時になっています」
片山「小泉手法からいうと、安倍さんを抵抗勢力にしている」
小泉節は相変わらず見出しになる。やっぱりたいした才覚だ。