「クローズアップ現代」によると土下座がいま空前のブームらしい。ブームを象徴するのは、大ヒットしたTBS系テレビドラマ「半沢直樹」である。制作ディレクターも「なんでこんなに当たったのかわからない」と首を傾げるこのドラマで、最高視聴率を稼ぎだしたのは「くどくどしい土下座のシーン」だった。
気持ち悪い最近の横行
ドラマだけではなく、現実の世界でも土下座は横行している。不祥事を起こした経営陣はそろって土下座。店員は客に土下座させられ、駅員は客から土下座させられ、職場では上司から無理やり土下座させられる次第である。
ところで、日本では土下座による謝罪はなにやら伝統ありげな風習に思えるが、歴史を紐解いてみると、じつは案外新しかったのである。時代劇を見ればわかるように、土下座はかつて頭を低く保って身分の違いを示す儀式であった。平民が殿様に、妻が夫に―。しかし、そうした風習が廃れた戦後になって、土下座は今度は謝罪の様式として復古し、台頭してきたらしい。
テレビの前での土下座謝罪はさらに新しいという。NHKでは1996年3月の薬害エイズのミドリ十字がはじめてのケースで、わずかこの10年、20年内のことだそうだ。
その裏になにがあるのか。識者からは例によって、日本社会の閉塞感や同調圧力、つるし上げによる溜飲下げなどが語られたが、ともかく日本人の土下座好きは相当に根強いようではある。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2013年10月8日放送「氾濫する『土下座』」)