新潟県・柏崎刈羽原発6、7号機の再稼動を目指す東京電力の広瀬直己社長は25日(2013年9月)に新潟県の泉田裕彦知事と会談した。知事に「お引取りください」とすげなく退出を迫られてから2か月半ぶりだ。
しかし、今回も知事から住民避難について新たな問題を提起され、「なるほどとは思えない」と回答を保留された。なぜか焦る東電に対し、安全対策を厳しく指摘する知事。いっこうにかみ合わない。
柏崎刈羽原発「冷却材喪失」で助かるのは避難2時間以内
広瀬社長は安全対策について、知事が批判している「フィルター付きベント」について新たな提案を行なった。耐震性の高い地下に新しいベント設備を増設する計画案で、元GE原子力コンサルタントの佐藤暁氏も「増設するという新たな『フィルター付きベント』だけでもいいじゃないかということになるかもしれない」と評価している。
しかし、これに泉田知事は「東電はお金と安全のどちらを大切にする会社でしょうか」と遠まわしの質問で返し、さらに「お急ぎでしょうか」とたたみ掛けた。実は、この質問は国も東電も自治体に丸投げし、なおざりにしている住民避難対策に対する新たな批判のための伏線だった。
東電がフィルター付きベントの増設で歩み寄った背景には、今年度中の経営黒字化が銀行からの新たな融資の条件になっており、再稼動を1日も早く申請したい焦りがある。
焦る東電の足元を見るように、泉田知事は「冷却材喪失事故が起きたとき、最短どのくらいでメルトダウンするかご存知ですよね?」と質問した。「2時間です」と答えた広瀬社長に、すかさず「2時間でどうやって避難するのですか」
政府、原子力規制員会、東電みんな自治体に丸投げ
原発事故で求められている半径30キロの避難計画では、柏崎刈羽原発の場合は9市町村が入り、広域過ぎていまだに具体的な避難計画は検討中の段階である。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「それは規制委員会のアレじゃないんですがね」と担当外といい、広瀬社長も「別途に進めなければいけない」といまだ手付かず状態だ。
たしかに、規制委員会が出した規制基準には避難計画の審査については明記されておらず、自治体ごとに対応することになっている。最も肝心な住民避難対策が自治体に丸投げされたままスッポリ抜け落ちた形だ。泉田知事は「きょうのやり取りを聞いて分かるんですけど、規制基準をクリアしても住民の安全は確保できない。規制基準は住民生命をいかに守るかの視点が欠けているんです。欠陥規制だということじゃないですか」と怒りを露わにする。
玉川徹(テレビ朝日ディレクター)「規制委員会の設置法のなかには、国民の生命、健康、財産の保護を目的とするとなっていいます。規制委員会がやっちゃいけないことはない。目的を達成しないで『アレじゃないですか』といわれても、知事の言うことはもっともなことだと思いますよ」
小松靖アナ「アメリカは原発稼動と避難計画はセットじゃないと動かせないようになっているようですが、避難について考えさせられることがでてきましたね」
最も肝心な事故発生のときの避難体制がスッポリ抜け落ちたままの再稼動など論外だろう。