長野県に住む中野ヒロ子さん(64)は4年前に悪性脳腫瘍に罹り、診断した医師からは余命は1年と宣告を受けた。発症から1年の生存率は50%、1度は手術でガンを取りきったが、直ぐに再発し症状は悪化していった。そんな時見つけたのが、東京大学の脳腫瘍外科で臨床研究を行っている「ウイルス療法」だった。
腫瘍に注射で直接接種
「ウイルス療法」について、臨床試験中の藤堂具紀教授は「ガン細胞だけで増えるウイルスを作り、直接ガン細胞をやっつける治療法です」と説明する。元になったのは唇の水ぶくれなどの原因となる口唇ヘルペスウイルスだ。藤堂教授は10年かけてこのウイルスから正常細胞は傷付けず、ガン細胞だけを破壊するウイルスを開発した。脳腫瘍ならば、頭に穴を開けて腫瘍に直接ウイルス注射をする。手術時間は1時間と短い。注射から50時間でほぼすべてのガン細胞が破壊された。
3年前にこの手術を受けた中野さんは、先月30日(2013年8月)に再検査を受けた。手術から41か月、「腫瘍は小さくなっています。再発の可能性はまずないでしょう」と藤堂教授が笑って言う。
ウイルス治療法は脳腫瘍だけでなく、ほぼすべてのガンに効果であることががわかってきた。藤堂教授は明言した。「10年後にはウイルス治療はごく当たり前の治療法になっていると確信していますよ」
(磯G)