「一生懸命、最後の最後まで(住民避難の)放送をしていたから、未希に何かがあってもいいじゃないかと思う。お金じゃないんだけどね」
東日本大震災の3月11日、津波が迫るなかで命をかけて住民避難を呼びかけ亡くなった宮城県南三陸町役場危機管理課の遠藤未希さん(当時24)の遺族が、危険な公務中の災害だったとして申請していた「特殊公務災害」が認められなかったことに、祖母がこう言って悔しがった。
「大津波来ます。高台へ避難してください」放送続けた南三陸町役場・遠藤未希さん
「大津波が予想されますので急いで高台へ避難してください」
未希さんは防災対策庁舎の防災放送で繰り返し住民に呼びかけ、最後は津波にのまれてしまった。庁舎はむき出しの鉄骨のまま残されており、今でも町の人は「天使の声」と称える。祖母は「これがなぜ当てはまらないのか、情けない」という。
大津波に襲われた庁舎では、未希さんを含め33人が公務中に亡くなり、遺族は危険な公務中の災害だとして特殊公務災害を申請した。結論は33人中32人が不認定だった。不認定の理由について、地方公務員災害補償基金の嶋田幸広次長が8日(2013年7月)に会見して、次のように述べた。
「庁舎は災害対策本部が設置された場所であり、直接的な大きな被害が及ばない場所であると認識されるべきものと考えられることから、規定に該当しないものと判断している。
結果として被災されているというのは、気持ちとして分かるが、法律で規定されているので、規定に則って判断するという説明になる」
肝心なときに役に立たない「天下り機関」
予想できないほどの大きな災害ほど該当外では本末転倒としか言いようがない。この基金は1972年の浅間山荘事件で警察官が射殺されたのをきっかけに設けられた。公務災害の場合、認定されれば最大2160万円の一時金のほか、年金などが遺族に支給される。特殊公務災害は一時金、年金とも公務災害の最大1.5倍とされている。
労災問題に詳しい川人博弁護士は、「納得できない判断だ。こういうときのためのある制度なのに、公務災害の運用については冷たいのが実情」という。
スタジオにスペシャルコメンテーターとして出演した漫画家の江川達也も、「(基金は)天下りの機関じゃないですか。そういう人たちの給料を減らしても、手厚い補償をすべきですよ。一人認めると次々と認めざるをえなくなると警戒したのだと思う」とやりきれないといった表情で語る。
こんなバカな判断しかできない天下り機関はいらないし、災害などそうあるものでもないのだから、現場を知る県とか担当の省が直接判断すればいい。