タイトルは「バリアフリーバラエティー」を略した造語だ。なにが「バリアフリー」なのかというと、この番組の出演者の多くが障害者なのである。「障害者の 障害者による 障害者のためのバラエティー」というわけで、番組コンセプトは「笑われるのではなく笑わせる」だ。
ただ、私はこれまで視聴を避けていた。周囲から聞く番組評が真っ二つで、「新しい!これが在るべき社会の姿だ」「望んで出演しているのかもしれないが、さらし者感がつらい」という両極の間で、自分がどのスタンスで見ればいいのかわからなかったからだ。
自分で自分の病気に名前を付けてみたら…
初めて見たこの日のトピックは、「障害者サミット第三弾!精神障害のルール」だった。進行役で脳性まひの玉木幸則さん、多発性硬化症の大橋グレースさんを除き、出演者はみな精神障害を抱えている。統合失調症2人、双極性障害2人、それに強迫性障害1人という顔ぶれだ。それぞれが日常で困っている悩みを軽減するための「精神障害についての新ルール」を提案し、話し合って採決する。
結論から言うと「さらし者」感はない。出演者はみな「自分は演者である」という意識をもっていて、統合失調症の「ハウス加賀谷」は発症以前からお笑い芸人というだけあって、番組の中の自分の立ち位置がわかっているし、他のメンバーも盛り上げに徹している。つまり、あまたのお笑いバラエティー同様に番組の流れがあり、出演者はその中でボケとツッコミを演じている。爆笑問題の田中裕二は背が小さいことをいつもネタにされるけれど、この番組では「障害」が同じようにネタになっているのだ。
「自分で自分の病名を付ける」という新ルールで、「じゃあスタジオメンバーも病名に〇〇タイプって付けてみよう」ということになった。振られた強迫性障害の女芸人・山田あみんの答えは「わたし?デブ専タイプ」とまんまだったのはちょっと寒かったけど、これもバラエティー番組では良くあることだ。
ただ、すべる企画もあった。新ルールの「ぬいぐるみ地位向上令」は双極性障害を抱える男性が、「精神安定のためのぬいぐるみを抱きかかえて、街中で話しかけても白い目で見られない社会を目指す」というものだったが、まったく盛り上がらなかった。「〇〇くんは心の病でぬいぐるみに依存しているんです。それでもあなたはぬいぐるみに話しかける行為を白い目でみますか」と街頭で問いかけたところ、返ってきた答えは「事情がわかれば白い目では見ないと思います。いろんな人がいますから」というものだった。まあ、それ以外の答え方ってあるのだろうか。
笑われているのはテレビのこちら側…アナタはどんな感想?
演者が奮闘するほど、「笑っていいのかな」という思いに駆られた。番組を楽しむという心持ちまではあと一歩というところ。そんなテレビのこっち側を出演者が笑っているのかもしれない。とはいえ、「障害者なのにこんなに頑張っている」を押し付ける某局の夏休みイベント「二十何時間テレビ」より好き。演者個々がわけも分からずステージに乗せられているのでないことはしかと伝わってきた。バラエティかどうかは置いておくとして、1度見てみることをオススメする。回によって、視聴者によってまるで違う感想が聞けそうで、興味深い。(NHK・Eテレ2月12日深夜0時30分)
(ばんぶぅ)