桜宮高バスケ主将自殺「体罰」だけじゃない?母親の期待と力不足の板挟み

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聞いていた「体育科に推薦進学枠」ないと知ってショック

   きっかけは昨年10月(2012年)にA君がバスケット部のキャプテンに自ら立候補したときからだという。A君はレギュラーになるのは苦しい実力だったが、どうやらキャプテンになれば大学進学に有利になると考えていたようだと先の同級生が話している。しかし、キャプテンにはなってみたものの、なかなか部内でうまくいかないため、本人もキャプテンを辞めたいと考えていたようだ。練習試合中にK先生から注意され、十数発のビンタを両頬に食らったA君は、その後、キャプテンを辞めたいとK先生に告げに行き、衝撃的な事実を告げられてしまう。

「その日、A君は初めて先生に『もう無理です。キャプテンを辞めたい』という旨を伝えた。K先生はA君に『じゃあBチーム行きやで』と、這い上がって来いという親心を込めて言ったんです。でも本人はBに落ちたらいやですよね。『じやあやっぱりキャプテン続けます』って言った。先生が『お前、どうしてそこまでキャプテンにしがみつくねん?』って聞いたら、『大学進学のためです』と漏らした。先生が『そんなこと誰に言われたんや?』って聞いたらA君は無言だったみたいなんですけど、先生が『お母さんに言われたんか?』って聞いたら『そうです』と。それで先生は『キャプテンをやったからといって、大学には行けない』という現実の話をして、A君はそれにショックを受けたようなんです。桜宮から指定校推薦の枠は無い。でもA君はその時まで、バスケで進学できると信じて疑っていなかった。目標があったからこそ、嫌々ながらもキャプテンを必死にやっていたのに……」

   A君が遺書を書き、自宅の寝室で首を吊ったのはその日の深夜から翌日の未明にかけてと見られている。

   思春期の子どもは多感である。それを「体罰は反対」というだけで学校に介入し、問答無用で桜宮高校を解体しようというのはおかしいと「桜宮を応援する会」の伊賀興一弁護士が語っている。「生徒を主人公にして、職員と保護者が学校の問題点を忌憚なく言えるような場にしていかなければならないのです」

   橋下市長は主人公である生徒たちの声を真摯に聞くところから始めなくてはいけなかったのだ。今からでも遅くない。生徒たちと車座になって、自分も受けてきたという体罰の思い出を話し、生徒の声を聞いてみたらいい。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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