ド田舎の寮生活で身につく「人としての強さ」「コミュニケーション能力」
「週刊文春」に「就職に本当に強い大学教えます」という特集がある。就活には間に合わないが、これから大学を選ぼうという受験生や親たちには必読であろう。たとえば、千葉科学大は危機管理学部をもち、卒業生の10%が消防官になっている。北海道の旭川大や苫小牧駒澤大は自衛官に強い。八王子にある日本文化大は卒業生の約4分の1が警察官になるそうだ。
今年7月に日本経済新聞が主要企業の人事トップに「人材育成の取り組みで注目する大学」と聞いたところ、1位に選ばれたのは国際教養大で、2位は東京大学だったが、3位には立命館アジア太平洋大が入ったのである。不明を恥じるが、私は国際教養大は知らなかったし、立命館は知ってはいるがアジア太平洋大は知らなかった。偏差値は国際教養大が67・5で早稲田大の法学部並みだが、アジア太平洋大学は50・0とさほど高くない。だが、就職実績は東京海上日動火災、JR東海、電通、味の素、みずほFGと人気企業が並んでいる。
2校の共通点は地方にあることだ。国際教養大は秋田、アジア太平洋大は大分の山間部に設立された新興大学で、海外からの留学生が多く、英語の講義も充実していて積極的に学生の留学を推進している。寮生活だから仲間との関係も密になり、英語が話せなくとも仲間同士が教え合ってマスターしていくそうだ。
国際教養大の一期生である水野勇気は大学を出て起業した。彼がこう話す。「AIU(国際教養大のこと=筆者注)はいまでこそ立派な図書館もありますが、基本的に山奥で何もない。三年間辺鄙なド田舎に来るのを選択している時点で、首都圏の学生とは違う。自分が何かに取り組まないと意味がない学校なんです。逆に言えば、そこが他の大学の学生とは違う魅力なのかもしれません」
だが、外国語が話せるというだけで両校の人気は説明できないと、大学通信の安田賢治ゼネラルマネージャーはいう。「長い寮生活では密な人間関係にもまれ、留学では世界各国さまざまなところに一人で向かう。こうした環境と経験が生きる力を育んでいる。評判でよく聞くのは、どちらの学生も誰とでも憶せず話せること。しかも英語に慣れているので、外国人が相手でも気後れせず議論もできる。そういう人としての強さが企業にとって魅力なのだと思います」
今はコミュニケーション能力を求める企業が多くなっているという。首都圏の大学に通い、希薄な人間関係の中で閉じこもりがちな学生では、これからの超グローバル化の時代を乗り切ることはできないということなのだろう。
私のオフィスの前を通っていく後輩の早大生たちの顔を見ていて、頷けるところの多い特集である。