日本維新の会の国政への本格参戦が始まった。代表の橋下徹大阪市長がきのう15日(2012年10月)、新党結成後初めて各党にあいさつ回りした。午前10時から午後3時45分まで精力的に14の政党を訪れたが、その順番や会話のやりとりから維新の会の狙いが見えてきた。
「みんな」「減税日本」と選挙協力
橋下が最初に訪れたのは、政権与党の民主党ではなく、野党第1党の自民党だった。橋下の方が安倍晋三総裁よりも早く着き、安倍は「本来われわれがお迎えするところですが」と恐縮気味に挨拶していた。会談で安倍は次の選挙に向けて単刀直入に「衆院選では何人候補者を立てるつもりか」と聞いたらしい。橋下は「鋭意検討中です」とかわし、双方とも腹のさぐりだったようだ。
自民の次に向かったのは公明党。公明とは地方での選挙協力関係が進んでおり、終始和やかな雰囲気だった。民主党はその次だった。野田首相の姿はなく、輿石東幹事長らが迎えたが、カメラの前でもっぱら話しかけたのは安住淳幹事長代行だった。両党の微妙な雰囲気をうかがわせるように、政党本部を東京ではなく大阪に置くことに関連し、「国会というのは毎日毎日ものすごい量の問題を処理しないといけないから、それは大変だよね」などとけん制球を投げていた。
最近また連携の可能性が浮上しているみんなの党では、渡辺喜美代表が「ご苦労のほどはよくわかります」とねぎらいの言葉をかけ、共通の政策作りに向けた協議を始めることを確認した。
こうしたあいさつ回りから何が見えてきたのか。政治アナリストの伊藤惇夫は、やはり訪問の順番にポイントがあるという。「政権与党の前に、自民、公明と会っている。新政権を組む場合どこと組むか。いちばん近いのが自民、次に近いのが公明ということが見えてきたと言えるかもしれません」
政治評論家の浅川博忠は「(橋下には)自分主導で選挙の時のパートナーを選んでいきたいという思いがあります。みんなの党や減税日本というのは選挙協力がしやすいということで、いちばん連携する第1候補になる」といい、選挙協力の相手探しの狙いがあったのではないかとみる。
支持率に陰りで単独過半数あきらめ…「虚像が実像に近付いてきている」
日本テレビ政治部記者の近野宏明は、自民党の安倍との挨拶で象徴的なやりとりがあったという。「虚像が実像に近付いてきている」という橋下の発言だ。一時の勢いに陰りが見えてきたということである。自民の復調もあり、単独で過半数を目指すという当初の戦略から第3極としての連携を重視する方向にシフトしてきたとみる。
コメンテーターのロバート・キャンベル(東大教授)は「第3極を形成するというのは現実的だが、各党が連携しても政策が合わないと民主党政権のような呉越同舟的な政権になる」と政策協議と国会運営の難しさを指摘する。
キャスターのテリー伊藤「虚像が実像に近付いてきたといっても、僕らは維新の会の実像も何も知らない。橋下さんが堂々と選挙に出て先頭に立たないと。だって、僕ら維新の会のほかのひとたち、誰も知らないもの」
これに精神科医の香山リカは「そんなことすると、大阪市の人たち、かわいそうじゃないですか。大阪市は踏み台になっちゃったということになる」と猛反発する。
出ない、出ないといっておきながら、最終的には立候補した大阪府知事選のこともあり、維新の会と橋下の動き、まだまだ予断を許さない。