中国の反日騒ぎは海外への日本の立場や見解を発信するという点でも後手に回っている。コメンテーターのロバート・キャンベル東大教授は16日(2012年9月)付の米紙「ニューヨークタイムズ」の記事を指差しながらこんな指摘をした。
「この記事は、一番大切な結論のところで人民日報の社説をそのまま引用しているのですよ。すごく挑戦的な言葉で締めくくっています」
人民日報の社説をそのまま紹介
人民日報の社説をそのまま掲載しているという記事にはこう書かれていた。「どうして日本は新たに失われた10年を求めるようなことをするのか。20年も歴史を遡るようなことをしようとするのか。中国は常に経済カードを非常に注意深く切ってきた。しかし、主権をめぐる争いで、もし日本が挑発を続けるならば中国もその戦いに立ち上がるだろう」
キャンベル教授によると、ニューヨークタイムズは10年前まで、アジア総局の位置づけで、東京支局には一番優秀な若手記者を派遣していた。それがこの10年の間に、中国の北京や上海に一番優秀な記者が行っているという。それにしては、中国政府の意向を気にせざるを得ない現地特派員の事情を考慮しても、優秀な記者が書いたとはお世辞にも言えないバランスを欠いた記事だ。ニューヨークタイムズもこの程度かと落胆する。
しかし、ニューヨークタイムズばかりではない。イギリスのタイムズも18日付の反日デモに関する記事ではこんな見出しを付けた。「日本の短気で性急な言動は日本全体に冷たい風を吹かせている」
評論家の宮崎哲弥が「日本のPRベタ。日本側は挑発なんかしていませんよ。自国の領土を国有化しただけですよ」と吠える。
本来なら北京大使館の大使や広報担当者が現地特派員に状況説明しておくべきだろう。東京でも外務大臣が会見し、海外メディア向けに情報を発信すべきだが、現状では努力しているとは言い難い。