週刊誌を読む楽しみに、各誌の論調の違いを読み比べるというのがある。そこで、いま話題の中心にいる橋下大阪市長率いる「大阪維新の会」について取り上げている「週刊現代」と「週刊ポスト」を比較してみよう。
産経ニュースの9月4日でこう書いている。いま選挙があれば比較第1党になりかねないというのだ。「産経新聞社とFNNの合同世論調査で、橋下徹大阪市長が率いる地域政党『大阪維新の会』が次期衆院選の比例代表投票先として約24%を占め、自民党(22%)、民主党(17%)を抑えてトップに立った」
橋下大阪市長にはおおむね好意的なところが多く、「サンデー毎日」の「橋下維新と安倍の連携はニッポンを滅ぼす!」のような論調は少数派のようである。なかでも現代は橋下大いに持ち上げ派で、今週も「この男しかいない」といい切っている。だが、読んでみると辛口コメントが多い。維新の会の政策の一つ、衆議院議員を半減させるという案には、「定数を半分にしたら、残りのスカスカの人数で衆院の常任委員会や特別委員会を開くことになってしまう。まさに役人天国になってしまう。橋下氏は単なる受け狙いで、何も考えずにただブチ上げたのだろう」(自民党山口俊一総務会長代理)
また、地の文でこういう書き方もしている。「自党の若手・中堅代議士が維新の会に擦り寄っていくのを見て、既存政党のベテラン議員からは、『維新の会は落選候補者の救命ボート』などと、揶揄する声も上がる」
さらに、橋下の過去の発言を取り上げているが、タレント弁護士時代にテレビでこんな発言をしている。「日本の一番情けないところは、単独で戦争ができないことだ」「徴兵制には賛成」「アメリカの核の傘に入っているから日本は(アメリカに)抗議できない。日本も核兵器を持つべき」
もちろん橋下のフォローはしているが、救命ボートに乗った落選寸前議員と素人同然の維新チルドレン議員が多数生まれれば、民主党の政権交代時よりも役人頼みが多くなり、官僚支配が強くなることは間違いないはずである。ましてや、万が一にも橋下総理誕生となれば、憲法改正、徴兵制、核兵器を持てとなるかもしれない。
一方のポストは冷ややかに橋下大阪市長に擦り寄る政治家たちを見ている。「大阪維新の会」に入ろうと野心満々の民主党・松野頼久元官房長官や自民党・松浪建太を新人ホステスと呼び、松野はTPP強硬反対派で、松浪は消費税増税法案に賛成した増税派なのに、TPP加盟賛成、増税反対の「大阪維新の会」に媚びを売るのは、「要するに、政治家にとって政策は衣装。橋下氏が望むなら、どんなコスプレでも厭わないというわけだ。そもそも、安倍氏にしても、大の原発推進派で消費税増税賛成と、橋下氏と政策は全く逆方向なのである」と批判する。
さらに、橋下が敬愛する石原慎太郎都知事の息子・伸晃が8月始めに橋下と会談したが、「こちらはチーママが大女将のコネで若旦那に『どうか私を選んでおくんなまし』としなをつくっているかのよう」と茶化す。
したがって、絶対裏切らないのは石原都知事だけで、橋下が「役に立たないと判断すれば躊躇なく切り捨てるはずです」と、石原と橋下をよく知る人間に言わせている。
「大阪維新の会」は衆院選までに400人規模の候補者を擁立するといわれる。ブームに惑わされることなく、候補者を見極めて一票を投じなければ、民主党よりもひどい政治になりかねない。郵政民営化イエスかノーか、政権交代、そして今度はヒーロー待望。どれだけ騙されたら日本人は目が覚めるのだろう。
西成ドヤ街シンポ「橋下改革」ボロクソ!保護費受給者死ぬのを待つわけかッ
ポストは8月27日に大阪・西成区の区民センターで開かれた「西成特区構想を考えるシンポジウム」の様子を伝えている。西成を変えることが大阪を変える第一歩と位置づける橋下大阪市長にとって、改革の最重点地域である。
この日は市特別顧問の鈴木亘学習院大学教授らが特区の方向性を説明し、住民とのディスカッションが行われた。600人の会場に650人が詰めかけ、怒号が飛び交ったという。
「あいりん地区の簡易宿舎をゲストハウスエリアとして国際観光の拠点にする? そんなトコに外人が来るかい!」「人口が減少して保護費の出費が減っていくっていうのは、人(受給者)が死ぬのを待つわけかッ?」「一貫校もええが、通学路問題はどうするねん。小学校の校門前で朝からエロ本が売られとるんやで。買いに来るおっさんと子供たちが一緒に歩いとるのを知ってまっか」
治安問題では、鈴木教授が「警察は協力的」だというと、「アンタのような偉い先生には紳士的やろが、ワシらにはボロクソや。通報しても何もしてくれん。自転車泥棒を捕まえるくらいしか能がないで」と手厳しい。
生活保護受給者が4人に1人という現状は放置できるものではないが、だからといって、いきなり国際観光の拠点というのは飛躍しすぎであろう。石原都知事が大好きな橋下市長だから、新宿歌舞伎町浄化のケースを考えているのかもしれないが、そのおかげでどれだけ歌舞伎町がつまらない街になったか、一度見に来たらいい。
寝たきり三國連太郎「灰になるまで役者」執念のリハビリ
「週刊文春」が博多のHKT48から脱退させられた古森結衣(14)の父親に「娘は無実。不当解雇されたのです」といわせている。彼女はHKT48一期生に合格して、博多の劇場から通える場所にアパートを借り、母親は自宅と博多を往復する生活をしていた。だが、ファンと直接交流してはいけないというルールを破り、父親によると身に覚えのないファンの専門学校生の家にお泊まりしていた「疑惑」で退団させられたのだそうである。
「AKB48残酷物語」と打っているわりにはどうということない話であるが、こうした不満の残る解雇を続けていると、近々AKB48運営側への不平不満が一気に噴き出すのではないか。
同じ文春に名優・三國連太郎(89)が老人ホームに入っていたという記事がある。厳密にいうと、医師や看護師が常駐している介護機能を備えた療養型病院らしい。息子の俳優・佐藤浩市によると、ある手術の予後に背骨が悪くなり、寝たきりになってしまったそうだ。自宅はバリアフリーではないため、妻だけでは世話することができないので入院させたが、リハビリを続けてだいぶよくなっているという。
佐藤の役者論がおもしろい。
「役者を続けたいのか二人で話したことはありませんが、三國の考えていることはよくわかる。役者とは浅ましくて愚かしいものなんですよ。決して人に言われて止められるものでもないし、自分の身体を見てけじめをつけられるほど潔い生き物でもない。ですから、あの歳であっても生業としての役者に執着している。最後、灰になるまでそうなのだと思います」
それまでは俳優としての体力を維持するために毎日2時間かけて散歩をし、読書をしていたという。あまり本を集めるので家が傾いたという逸話があるそうだ。
佐藤は三國の息子だけあっていい味を出す俳優になってきた。高倉健の映画「あなたへ」にも出演し、それほど出番は多くはないが、陰のある中年男を演じている。映画としての質は高くはないが、佐藤と余貴美子がいい余韻を残す。
毎度ブツブツいっているが、軟らかい記事に読むべきものがない。ポストは「美女医4人が特別講義『熟女とのSEX』その技法と甘美な快感」、現代は「日本女性『外性器の研究』」だが、タイトルを見て読む気になれない。外性器なんかあれこれ解説されてもな~というのが正直なところだ。軟派記事は想像力の勝負である。各誌担当者に告ぐ!熟考せよ。