前田敦子はまり役「苦役列車」内向的、厭世的な不思議少女―案外「素」なのかも

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で
(C)2012「苦役列車」製作委員会
(C)2012「苦役列車」製作委員会

苦役列車>映画が始まってたった5分でここまで嫌いになるヒーローは初めてだ。と書くと、とんでもない悪口のようだが、実際はその逆である。森山未来は凄い。いきなり風俗店から登場し、白米をニチャニチャ噛み、背中を丸めて他人をひがむ。肘を張り、犬のように食べる。何を話していてもふた言目には「どうせ僕は中卒だよ」「低能だよ」「クズさ」と自虐のオンパレードなのだ。

   森山演じる主人公・北町貫多は15歳のときから日雇い人足で生計を立ててきた19歳の青年だ。小学5年生のときに父親が性犯罪で逮捕され、一家離散の憂き目にあった。そんな貫多と高良健吾演じる同じ年の専門学生・正二が、日雇い人足の現場で出会ってからの日常を描いた映画である。原作は西村賢太の芥川賞受賞作。純文学の映像化だけに、小説の起伏が映像になりづらいのではという不安はあった。

森山未来「自虐ふて腐れ」と高良健吾「お人好しお坊ちゃま」の友情と軽蔑

   貫多は常に誰かを見下している。半面、自分が見下されることにもひどく敏感ですぐキレる。自分の素行を棚に上げて悪態をつき、女の子を見ればヤれるかどうかしか考えない。すくすくと健康に育ってきた正二が出会った当初は、「変わっているけど悪くないヤツ」と見ていた貫多を、次第に軽蔑していくのががんがん伝わってくる。NHKの朝ドラ「おひさま」でも真っ直ぐな青年を演じた高良だけに、この手の役に死角はない。

   しかし、正二は人がいいというか甘いというか、態度のでかい学歴コンプレックス男に、金は貸すわ、女の子を紹介しようとするわ。早く見限って!と叫びたくなる。

   加えて、映画のオリジナルキャラクターにして紅一点の「康子」を演じる前田敦子が良すぎる。薄化粧でスタイルを悪く見せるモコモコニットと半端な丈のスカートなのに、アイドル衣装のときより可憐。なにより、ひと目見ただけで「内向的だけど芯があり、何を考えているかわからない」不思議少女を『感じさせて』しまうのが凄い。彼女のパーソナリティにその素養があるんだろうなぁ。「可愛いけどあか抜けなくて親しみやすい」役柄ならよくあるのだけれど、そこに内向的、厭世的って要素が加わると、いっきに変わり者になる。あっちゃん、はまり役です。

姉妹サイト