北島康介(29)の3連覇はならなかった。ロンドン五輪水泳男子平泳ぎ200メートル決勝で日本の立石諒(23)が3位に入り、北島は4位に終わった。日本水泳界の世代交代を告げるシーンだった。
1コース立石、2コース北島と隣り合わせとなったレースは、スタート直後から北島が飛び出し、世界記録を超えるスピードで50、100メートルを1位で通過した。しかし、後続につかまり、最後の50-メートルでは立石が追いこみ、タッチの差で北島をかわした。
目標失っていたときに「3・11」絶対あきらめないで
北島にはアテネ、北京とオリンピック3大会連続の金メダルがかかっていた。だが、北京五輪終了後、「燃え尽き症候群」に襲われた。次は何を目標とすべきか、自分と向き合うためにアメリカに渡った。そこで水泳の楽しさを取り戻したが、本格的にオリンピックでメダルをめざそうと思ったのは、昨年(2011年)3月11日の大震災だった。プールを失った子どもたちが「泳ぎたい」と訴えていることを知り、被災地を訪れ「自分も頑張るから君たちも頑張って!」と金メダル獲得を約束した。この4年間には、そんな葛藤や秘めた思いがあった。
3連覇はかなわなかったが、泳ぎ終わった北島に悔いはなかった。「立石が銅メダルを取ってくれてよかった。僕にできる精一杯のレースができた」とさっぱりとした笑顔の表情で語った。被災地の子どもたちにも「絶対あきらめない」メッセージを伝えることができた。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト