生存権に加入権、命名権、会員権――などなど世の中いろんな権利であふれてるが、いまネット社会には「忘れられる権利」が課題であるようだ。忘れられたい過去の過ちは誰にでもある。しかしネットでは過去の情報が永久に不滅で、その人の名前を検索するだけで簡単に見つかってしまう。それではたとえば就職などにも影響があるので、問題じゃないかというわけである。
過去の書き込み・自分情報を消したい
「クローズアップ現代」によれば、大手企業で働いていたAさんは、半年前に「小さな過ち」を犯した。自分の店だか会社にやってきた芸能人が偉そうで女連れでウザかったなどとツイッターに書き込んだのだ。仮名でやっていたツイッターでつい悪ノリして書いてしまったのだが、このつぶやきが掲示板に転載されると、Aさんはネットの匿名の連中からよってたかって制裁を加えられた。何年分ものツイートを漁られ、過去に書き込んでいた情報をもとに、実名で登録していた交流サイトが探し出される。恋人との写真やら何やらまで転載され、プライバシーは丸裸にされた。Aさんは会社を辞め、「事件」から半年以上経った今も自宅にひきこもりがちで、ネットの誹謗中傷に苛まれているという。
このような「怖い」(森本健成キャスター)出来事はネット上ではわりとよく聞く話だ。暴く側の論理からすれば、それらは元はといえば、すべて自分がネットに上げた情報であり、自業自得だね、バカ発見だね、いいね!、自己責任だねといったことで済まされがち。それでいいのだろうか。
昔のヌード写真掲載された女性がグーグルに勝訴
プライバシー先進国のEUに行くとまたお話は違うのである。彼の地では「忘れられる権利」が尊重され、法整備が進んでいる。具体的には、サイトや検索サービスに自分に都合の悪い情報を削除してもらう権利である。きっかけとなったのは、ある女性がグーグルに勝訴した「画期的な判決」。昔撮ったヌード映像がネット上に載っているのを検索できないように求め、勝ったのである。
EUの議会に提出された「忘れられる権利」法案では、個人からの正当な要請があれば、検索サービスやサイトの管理者は情報を削除しなければならず、応じないと約5000万円もの罰金を科すといった内容になっているそうだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2012年6月26日放送「『忘れられる権利』はネット社会を変えるか?」)