「自分の中で確定していることが2つあります。『もう仕事はしない』『政治家にならない』。芸能界への未練はぜんぜんない。もうやり尽くしたと思っています。ただ、いつか『テレビに出れる人』にはしてほしい。一連の報道の中で、まるで島田紳助が犯罪者のようになっているのが嫌や。犯罪者やからテレビはNGという空気になっている。テレビに出れる人に戻してくれよというのはある」
これは「週刊文春」の「島田紳助独占告白90分」で、8か月ぶりに沈黙を破った紳助(56)が語った言葉である。だが、スクープと謳っていないのはどうしたことなのか。読んでいくうちに、この記事は紳助が芸能界復帰のための第1歩ではないかと思いたくなる発言がそこかしこにある。だが、ともあれ彼のいい分を聞いてみよう。引退の理由は暴力団との交際だったのかと聞かれ、こう答えている。
「暴力団との交際がすべてではないんですよ。自分の中では違う理由があった。でもそれは会社の人にも言うてないことなんです。(中略)いろんな自分の中の思いがあり、年齢的な思いがあり、仕事への思いがあり。芸能界でやるべきことはやり尽くしたんじゃないかとか、このまま何もせんと終わってしまうのかとかね。芸能界の中で死に場所を探していたけど、ここちゃうんじゃないかとか。何十年も自分がこの仕事に携わってきて、夢見て、夢を達成してきた。でも夢を達成するということは夢を失っていくことじゃないですか。自分の夢がいっぱいあって、夢が消えていくなかで、いろんなことを五十過ぎたら感じるんですよね」
要は、芸能人としてではない人生があるのではないかと思っていたところに、暴力団との話が出てきたので、潔く彼なりの美学を貫いたということのようだ。
記者会見では暴力団とのツーショット写真の存在を否定し、「ウソを言っていたら、みんなの前で腹を切りますよ」と大見得を切ったのに、「フライデー」が暴力団と紳助のツーショット写真を掲載したことは、「ただ一つ、写真の件だけは僕のミスです。あの写真は何年前のか知らんけど、ホンマに記憶になかった」と、あっさり認めている。所有している不動産が暴力団が関与していたという報道に対しては、激しく否定している。
「それが一番腹が立つねん。僕は使いきれないくらいの十分な給料を貰っていました。マジメな話、そんな人間が『企業舎弟』とか『暴力団と地上げ』をするリスク背負うわけがないやないですか。そんなことしていたら、いまごろとっくに警察に逮捕されていますわ」
逮捕情報もあったがという問いには、「逮捕どころか、警察に呼ばれてもいないでしょ。何でかと言うたら、不動産って売買記録が残っている訳です。いくらで買っていくらで売ったか。調べたら明らかなんですわ。高く買って、暴力団に裏金渡していたらアホですわ、俺」
あのとき謝罪して仕事を続けてもよかったと「後悔」
女性関係については、「共演した女性タレントと全部関係あるみたいな書き方ですやん。男の友達もいるけど女の友達もいるでしょ。女友達で、書かれた中で95%はウソですわ。ゼロとは言わんけど」
暴排条例のスケープゴートにされたと思うかという問いには、「ひとつの目玉になったんかな。人の悪口言うつもりはないけど、ヤクザと飯を食ったことのある人、いっぱいおるんちゃうの? 他の方も写真が出たり、会うたりしたんでしょ? なんで俺だけ? まったく一緒なのに、なんで俺だけ犯罪者みたいな言われ方をされなあかんの」と反論し、あの時「すいませんでした」と謝罪して、そのまま仕事を続けていてもよかったと「後悔」しているという。
だが、それとは反対に、55歳でキッパリ芸能界を引退した上岡龍太郎を尊敬していて、ああなりたいと思っていたともいう。芸能界には、「あんだけ書かれて、そんなに嫌われてるんなら戻る必要はないわ、というのが正直な気持ち。こんな世界やったんかって、終わってからあらためて気がついた」と話す反面、「ただ、いつか『テレビに出れる人』には戻して欲しい」と、未練を口にもする。
これからは世界中を旅行して回ろうと思っているようだ。一時は自殺まで考えたというが、「引退して苦しいこと、悔しいことばかりでした。でも生きているだけで人間、幸せなものなんです。いやー死なんで良かった、生きていて良かった。今ではホンマにそう思ってます」
全体に綺麗事で終始し、警察に事情聴取もされていないことを何度も強調している。暴排条例が全国に施行され、紳助の引退をきっかけに大物演歌歌手や俳優たちと暴力団との付き合いが問題になったが、昨年暮れのNHK紅白歌合戦には何のお咎めもなく疑惑の歌手たちが多く出演していた。吉本興業の中田カウスにも何の咎めもない。警察が暴排条例を知らしめるために紳助をスケープゴートにしたと、批判されても仕方ないところは確かにある。
そうした空気を読んで、紳助の芸能界復帰を仕掛けている人間がいるのも間違いないだろう。だが、芸能界は「こんな世界」だと気がついたのだから、紳助は2度と戻らないほうがいいと思うのだが。
「御料牧場」牛乳からだけ放射性セシウムなぜ?
「週刊新潮」は巻頭で「宮内庁『御料牧場』牛乳から16ベクレル!」のセシウムが検出されたと報じている。その程度といってはならぬ。この牛乳は両陛下はもちろんのこと皇太子や秋篠宮一家も口にされるのだから「等閑視」してはならぬと書いている。
栃木県下の牛乳はすべて放射能不検出なのに、なぜ御料牧場で微量とはいえ検出されたのか。新潮は牧場を訪ねてみて驚いたという。宮内庁報道室は、乳牛の放牧を控え、飼料についても配合飼料を増やしているというのに、パドックで暢気に草を食む乳牛がいるではないか。天皇家の食卓を担う大膳課の料理人は、厨房に入る前には必ず入浴して体を清めることになっていて、御料牧場の乳牛もまた朝夕の搾乳の前に1日2回シャワーを浴びるそうである。
「天皇家に供される食べ物は、そこまで徹底し、あらゆる汚染を避けなくてはならないのです。この数値をどうとらえるかは別として、御料牧場の牛乳に放射性セシウムが含まれていたとすれば大事件です」(農政ジャーナリストの横田哲治)
天皇家を思う新潮の忠臣ぶりに頭が下がる。
原発マネーは脱原発より強し!各地で推進派首長が続々当選
その放射性セシウムをまき散らした元凶の原発だが、再稼働に向けて、野田佳彦首相を始めとする面々が突き進んでいるが、世論調査では再稼働に反対が過半数である。だが、新潮の「選挙なら『脱原発』が負け続けるわけ」にもあるように、このところの原発を抱える、もしくは原発建設予定自治体の首長選挙で、脱原発派の候補が負け続けているのだ。
4月15日(2012年)に行われた浜岡原発を抱える静岡県御前崎市の市長選で、原発との共存政策をとってきた候補が大差で勝ち、昨年9月に行われた山口県上関町長選では、原発推進派の候補がこれも圧勝している。10月の北海道の泊原発から半径10キロ圏内にある岩内町長選でも原発容認派の現職が圧勝している。
これはよく知られているように、原発による交付金がなければ町の財政が成り立たないし、雇用もなくなるという恐れが周辺住民にあるからだ。東京大学大学院の開沼博はこういっている。
「私は福島の事故後、泊原発近くの住民に『ここも福島のようになったら危険ですね』と尋ねた。すると『事故が起こるまでは生き続けられる』と答えた人がいました。つまり、彼らは原発に生活を頼らざるを得ない。そういう現実があるのです」
原発マネーは脱原発より強し。この構造を変えるには、メディアはただ原発反対を唱えるだけではなく、原発に依存してきた生活から抜け出し、どうやったら自立していけるのかを具体的に提示しなくてはいけないはずだ。
原発ゼロで夏に大停電は「官製デマ」か
「週刊ポスト」は新聞・中吊り広告で「怒りを忘れた『週刊誌』なんて!」と謳い、「原発再稼働の大嘘」で、当初、原発再稼働に慎重だったはずの野田首相や枝野幸男経産相が、原発再稼働に前のめりになったことを痛烈に批判している。
「4月3日の関係閣僚会合から、何かに取り憑かれたように再稼働に驀進する。野田首相が会合で『新たな安全基準をつくれ』と命じて新基準ができるまでが2日間、枝野氏が新基準をもとに関電に『安全対策を出せ』と指示してから提出まで3日間。わずか1週間足らずで安全かどうかの判断基準を決め、それに基づいて安全のお墨付きを与えるという離れ業を演じたのである」
そうして枝野は記者会見で、「再稼働基準をおおむね満たしている」といってのけた。「『おおむね』で動かされてはたまらない。あのアホの繰り言『ただちに影響ない』と同じ詐欺的論法である」と怒りをぶちまける。
原発推進の黒幕は仙谷由・民主党政調会長代行人で、野田や枝野が弱腰にならないかと監視しているというのだ。野田や素人大臣を操っているのは経産省の「電力マフィア」で、その中心にいるのが今井尚也資源エネルギー庁次長。原発再稼働には彼の出世がかかっているそうである。
この度の新基準は原子力安全・保安院の原子力発電検査課が、原発推進派の学者や東京電力の技術者を集めて開いた「意見聴取会」でまとめられたもので、「『これでも出しておけ』と手元にあった文書をそのまま提出したというのが真相だろう」と容赦ない。さらに水素爆発の対策として、大飯原発にフィルター付きのベント設備を設置するとしたが、発表された工程表では整備期限は3年後になっているのはおかしいと批判する。
ポストは以前から、原発がなくても電力不足にはならないというキャンペーンをやってきた。今回も、大飯原発が再稼働できなければ夏に大停電になるというのは「官製デマ」で、それに無批判に同調する大新聞を難じている。電力が足りなくなるなんて「デタラメだから安心していい」とまでいい切る。非常時の電力である揚水発電を少なく見積もる「電力隠し」があり、企業の非常用電源などを入れれば、「この夏の電力各社のピーク時電力使用量が記録的猛暑だった10年と同じだったとしても、『原発再稼働なし』で乗り切れる」とする。
「週刊朝日」の広瀬隆・緊急寄稿でも、「今年の25%電力不足というデマは、昨年よりひどい大嘘の最大電力需要3138万kWという、あり得ない想定をして、電力不足を煽った結果であった」と書いている。
ポストや広瀬の試算がどれだけ正しいのか、私には判断材料がない。だが、原発再稼働には、国民一人一人が大停電したとしても仕方ないという覚悟をもって反対しないと、ずる賢い政治家・役人やそれを後押しする大メディアと闘うことはできまい。こうなったら「消費税増税」と「原発再稼働か否か」の大テーマを争点に総選挙をするべきであろう。